(保険料率)
第百六十条 協会が管掌する健康保険の被保険者に関する一般保険料率は、千分の三十から千分の百二十までの範囲内において、支部被保険者(各支部の都道府県に所在する適用事業所に使用される被保険者及び当該都道府県の区域内に住所又は居所を有する任意継続被保険者をいう。以下同じ。)を単位として協会が決定するものとする。
2 前項の規定により支部被保険者を単位として決定する一般保険料率(以下「都道府県単位保険料率」という。)は、当該支部被保険者に適用する。
3 都道府県単位保険料率は、支部被保険者を単位として、次に掲げる額に照らし、毎事業年度において財政の均衡を保つことができるものとなるよう、政令で定めるところにより算定するものとする。
一 第五十二条第一号に掲げる療養の給付その他の厚生労働省令で定める保険給付(以下この項及び次項おいて「療養の給付等」という。)のうち、当該支部被保険者に係るものに要する費用の額(当該支部被保険者に係る療養の給付等に関する第百五十三条第一項の規定による国庫補助の額を除く。)に次項の規定に基づく調整を行うことにより得られると見込まれる額
二 保険給付(支部被保険者に係る療養の給付等を除く。)、前期高齢者納付金等及び後期高齢者支援金等に要する費用の予想額(第百五十三条及び第百五十四条の規定による国庫補助の額(前号の国庫補助の額を除く。)並びに第百七十三条の規定による拠出金の額を除く。)に総報酬按分率(当該都道府県の支部被保険者の総報酬額(標準報酬月額及び標準賞与額の合計額をいう。以下同じ。)の総額を協会が管掌する健康保険の被保険者の総報酬額の総額で除して得た率をいう。)を乗じて得た額
三 保健事業及び福祉事業に要する費用の額(第百五十四条の二の規定による国庫補助の額を除く。)並びに健康保険事業の事務の執行に要する費用及び次条の規定による準備金の積立ての予定額(第百五十一条の規定による国庫負担金の額を除く。)のうち当該支部被保険者が分担すべき額として協会が定める額
4 協会は、支部被保険者及びその被扶養者の年齢階級別の分布状況と協会が管掌する健康保険の被保険者及びその被扶養者の年齢階級別の分布状況との差異によって生ずる療養の給付等に要する費用の額の負担の不均衡並びに支部被保険者の総報酬額の平均額と協会が管掌する健康保険の被保険者の総報酬額の平均額との差異によって生ずる財政力の不均衡を是正するため、政令で定めるところにより、支部被保険者を単位とする健康保険の財政の調整を行うものとする。
5 協会は、二年ごとに、翌事業年度以降の五年間についての協会が管掌する健康保険の被保険者数及び総報酬額の見通し並びに保険給付に要する費用の額、保険料の額(各事業年度において財政の均衡を保つことができる保険料率の水準を含む。)その他の健康保険事業の収支の見通しを作成し、公表するものとする。
6 協会が都道府県単位保険料率を変更しようとするときは、あらかじめ、理事長が当該変更に係る都道府県に所在する支部の支部長の意見を聴いた上で、運営委員会の議を経なければならない。
7 支部長は、前項の意見を求められた場合のほか、都道府県単位保険料率の変更が必要と認める場合には、あらかじめ、当該支部に設けられた評議会の意見を聴いた上で、理事長に対し、当該都道府県単位保険料率の変更について意見の申出を行うものとする。
8 協会が都道府県単位保険料率を変更しようとするときは、理事長は、その変更について厚生労働大臣の認可を受けなければならない。
9 厚生労働大臣は、前項の認可をしたときは、遅滞なく、その旨を告示しなければならない。
10 厚生労働大臣は、都道府県単位保険料率が、当該都道府県における健康保険事業の収支の均衡を図る上で不適当であり、協会が管掌する健康保険の事業の健全な運営に支障があると認めるときは、協会に対し、相当の期間を定めて、当該都道府県単位保険料率の変更の認可を申請すべきことを命ずることができる。
11 厚生労働大臣は、協会が前項の期間内に同項の申請をしないときは、社会保障審議会の議を経て、当該都道府県単位保険料率を変更することができる。
12 第九項の規定は、前項の規定により行う都道府県単位保険料率の変更について準用する。
13 第一項及び第八項の規定は、健康保険組合が管掌する健康保険の一般保険料率について準用する。この場合において、第一項中「支部被保険者(各支部の都道府県に所在する適用事業所に使用される被保険者及び当該都道府県の区域内に住所又は居所を有する任意継続被保険者をいう。以下同じ。)を単位として協会が決定するものとする」とあるのは「決定するものとする」と、第八項中「都道府県単位保険料率」とあるのは「健康保険組合が管掌する健康保険の一般保険料率」と読み替えるものとする。
14 特定保険料率は、各年度において保険者が納付すべき前期高齢者納付金等の額及び後期高齢者支援金等の額(協会が管掌する健康保険及び日雇特例被保険者の保険においては、その額から第百五十三条及び第百五十四条の規定による国庫補助額を控除した額)の合算額(前期高齢者交付金がある場合には、これを控除した額)を当該年度における当該保険者が管掌する被保険者の総報酬額の総額の見込額で除して得た率を基準として、保険者が定める。
15 基本保険料率は、一般保険料率から特定保険料率を控除した率を基準として、保険者が定める。
16 介護保険料率は、各年度において保険者が納付すべき介護納付金(日雇特例被保険者に係るものを除く。)の額(協会が管掌する健康保険においては、その額から第百五十三条第二項の規定による国庫補助額を控除した額)を当該年度における当該保険者が管掌する介護保険第二号被保険者である被保険者の総報酬額の総額の見込額で除して得た率を基準として、保険者が定める。
17 協会は、第十四項及び第十五項の規定により基本保険料率及び特定保険料率を定め、又は前項の規定により介護保険料率を定めたときは、遅滞なく、その旨を厚生労働大臣に通知しなければならない。
(準備金)
第百六十条の二 保険者は、政令で定めるところにより、健康保険事業に要する費用の支出に備えるため、毎事業年度末において、準備金を積み立てなければならない。(保険料の負担及び納付義務)第百六十一条 被保険者及び被保険者を使用する事業主は、それぞれ保険料額の二分の一を負担する。ただし、任意継続被保険者は、その全額を負担する。
2 事業主は、その使用する被保険者及び自己の負担する保険料を納付する義務を負う。
3 任意継続被保険者は、自己の負担する保険料を納付する義務を負う。
4 被保険者が同時に二以上の事業所に使用される場合における各事業主の負担すべき保険料の額及び保険料の納付義務については、政令で定めるところによる。
160
【試験問題】次の説明は、健康保険法に関する記述である。
承認健康保険組合が介護保険第2号被保険者である被保険者(特定被保険者を含む。)に関する保険料額について特別介護保険料額を採用する場合、その算定基準は、当該承認健康保険組合の特別介護保険料の総額が当該健康保険組合が納付すべき介護納付金の総額よりも高くなるように規約で定めなければならない。 【解答】×
介護保険料率は、各年度において保険者が納付すべき介護納付金(日雇特例被保険者に係るものを除く。)の額(協会が管掌する健康保険においては、その額から第百五十三条第二項の規定による国庫補助額を控除した額)を当該年度における当該保険者が管掌する介護保険第二号被保険者である被保険者の総報酬額の総額の見込額で除して得た率を基準として、保険者が定める。 (健康保険法 160条16項)
「高く」なるようにではなく、「等しく」なるように規約で定めなければならない。
政令で定める一定の要件を満たすものとして厚生労働大臣の承認を受けた健康保険組合(承認健康保険組合)については、特例として介護保険第2号被保険者である被保険者(特定被保険者を含む。)に関する保険料額を一般保険料額と特別介護保険料額(定額の介護保険料額)との合算額とすることが認められている。
そして、特別介護保険料額の算定方法については、政令をもって定める基準に従い、特別介護保険料額の総額と当該組合が納付すべき介護納付金の額が等しくなるように規約をもって定めるものとされている。
【承認健康保険組合】とは、政令で定める要件に該当するとして厚労大臣の承認を受けた健保組合介護保険第2号被保険者(特定被保険者含む)の保険料額を、一般保険料額と特別介護保険料額との合算額とすることが規約なしで出来る健康保険組合です。
【承認健康保険組合】に係る承認は、法205条による、「地方厚生局長等への権限の委任」に基づき、厚生労働大臣から地方厚生局長等への委任事項とされています。
【試験問題】次の説明は、保険料に関する記述である。
健康保険組合は、規約で定めるところにより、一般保険料額だけではなく、介護保険料額についても事業主の負担割合を被保険者よりも高くすることができる。【解答】?
1 160条8項
次の説明は、届出等に関する記述である。
健康保険組合の一般保険料率の決定は、厚生労働大臣の認可を受けなければならないが、一般保険料率と調整保険料率とを合算した率の変更が生じない一般保険料率の変更の決定については、厚生労働大臣の認可を受けることは要せず、変更後の一般保険料率を厚生労働大臣に届け出ることで足りる。 2006年度(平成18年度)
解答○
協会が都道府県単位保険料率を変更しようとするときは、理事長は、その変更について厚生労働大臣の認可を受けなければならない。 (健康保険法 160条8項)
健康保険組合は、健康保険組合連合会が行う交付金の交付の事業の費用に充てる貯め、健康保険組合連合会に対し、拠出金を出しますが、この拠出金の費用に充てるため【調整保険料】を徴収します。その額を定める際に【調整保険料率】を乗じます。【調整保険料率】は、交付金の交付に要する費用並びに健康保険組合の組合員である被保険者の数及び標準報酬を基準として政令で定められます。【調整保険料率】=「基本調整保険料率」(厚生労働大臣が定める率)×「修正率」(健康保険組合連合会が定める率)とされています。
全国健康保険協会及び健康保険組合が管掌する健康保険の被保険者に関する一般保険料率は、1000分の30から1000分の120(従来は100)までの範囲において決定することとされた。
一般保険料率の変更の決定については、変更後の一般保険料率を厚生労働大臣に届け出ることで足りる。なお、調整保険料率は、交付金の交付に要する費用ならびに健康保険組合の組合員である被保険者の数及び標準報酬を基礎として、政令で定めるものとされている。
[自説の根拠]法附則第2条第8項 第9項
関連問題
次の説明は、費用負担に関する記述である。
厚生労働大臣は、厚生労働大臣(旧社会保険庁長官)の申出を受けた場合において、必要があると認めるときは、社会保障審議会の議を経て1000分の66から1000分の99までの範囲内において、一般保険料率を変更することができる。
解答○?
12 161条
次の説明は、健康保険法に関する記述である。
被保険者が傷病手当金の支給を受けたが、その支給期間が終わっても治癒せず、その療養のために労務に服しなかったため収入がなかった場合は、当該被保険者負担分の保険料は免除され事業主負担分のみ納付する義務を負う。 2012年度(平成24年度)
解答×
健康保険の保険料は労使折半ですが、納付義務は使用者にあります(健康保険法第161条)。休業中の保険料については、事業主が被保険者の分もあわせて納付し、その後被保険者から徴収する形になります(ポイント)。
病気休職中でも、保険料の納付義務が免除されるわけではありません
被保険者負担分の保険料も免除されませんので、誤っている肢となります。
健康保険料は、【育児休業等】をしている一般の被保険者が使用される事業所の事業主が、保険者等に申出をしたとき、または、【少年院に収容】されたとき、あるいは、【刑事施設、労役場に拘禁】されたとき、免除される。
免除される保険料は、【被保険者及び事業主】の負担すべき保険料である(法158条、159条)
9 161条
次の説明は、保険料に関する記述である。
被保険者資格を喪失した者に係る保険料で、その者に支払う報酬がないため控除できない場合は、事業主は被保険者負担相当分を除いた額を納付する。 2011年度(平成23年度)
解答 ×
資格を喪失した者に関する保険料で、その者に支払う報酬がないため控除できない場合又は支払っても控除できない場合でも事業主は、その納付義務がある。
特殊の事情により控除しなかった保険料については、事業主は別途求償するべきものとされている。
(法161条、昭和2年2月14日保理第578号、昭和4年1月18日事発第125号)
事業主は、被保険者に対し支払うべき報酬のないため保険料を控除し得ぬ場合又は支払っても控除し得ぬ場合であっても、被保険者の負担すべき保険料を納付すべき義務を負うことになる。
また、事業主は、被保険者に支払う報酬から控除した被保険者の負担する保険料の額のいかんにかかわらず保険料全額の納付義務を負うべきものであるとされている。(昭和2年2月14日保理第218号)
161
【試験問題】次の説明は、保険料に関する記述である。被保険者の使用されている事業所が譲渡によって事業主に変更があったとき、保険者は事業主が変更する前の保険料については、納期前であっても保険料のすべてを徴収することができる。 【解答】○
被保険者及び被保険者を使用する事業主は、それぞれ保険料額の二分の一を負担する。ただし、任意継続被保険者は、その全額を負担する。 (健康保険法 161条)事業所の譲渡によって事業主に変更があったときは、事業所が廃止された場合に該当し繰り上げ徴収の事由に該当する。現に被保険者を使用しつつある工場又は事業場において譲渡により事業主に変更があったとき、前事業主は、工場又は事業場における財産のほか他に何の財産も有しない場合が多く、従って事業主変更前の保険料を法定納期限翌月末日までまって徴収しようとしても本人は無財産のために徴収不能の結果を生ずることは明白であり、このような場合には、前事業主経営の工場又は事業場はこれを廃止したのと同一の結果を生ずるので、被保険者の使用される事業所が廃止されたときに該当するものとして繰上徴収して差し支えないとされている。法172条3号、昭和5年11月5日保理513号 保険料を納期前であっても全て徴収できるケースは次の場合です。①「納付義務者」が、a国税、地方税等の【滞納処分】を受けるとき、b【強制執行】を受けるとき、c【破産手続開始】決定を受けたとき、d【企業担保権の実行手続】の開始があったとき、e【競売の開始】があったとき、②法人である納付義務者が【解散】した場合、③被保険者の使用される事業所が、【廃止】された場合です。設問は、③の廃止に準じるケースとして取扱われます。
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