労災法 第三十八条 不服申立て及び訴訟

第五章 不服申立て及び訴訟

第三十八条  保険給付に関する決定に不服のある者は、労働者災害補償保険審査官に対して審査請求をし、その決定に不服のある者は、労働保険審査会に対して再審査請求をすることができる。
2  前項の審査請求をしている者は、審査請求をした日から三箇月を経過しても審査請求についての決定がないときは、当該審査請求に係る処分について、決定を経ないで、労働保険審査会に対して再審査請求をすることができる。
3  第一項の審査請求及び前二項の再審査請求は、時効の中断に関しては、これを裁判上の請求とみなす。


【試験問題】次の説明は、労災保険の保険給付及び特別支給金等に関する処分に対する不服申立て及び訴訟等に関する記述である。
特別支給金に関する決定は、保険給付に関する決定があった場合に行われるものであり、当該特別支給金に関する決定に不服がある被災者や遺族は、労働者災害補償保険審査官に審査請求をすることができる。 【解答】X

特別支給金は、社会復帰促進等事業のうち被災労働者等援護事業として行われるため、保険給付でなく、その決定に不服がある場合であっても、労働者災害補償保険審査官に対して審査請求することはできない。
法38条1項

保険給付以外の処分に不服のある者は、行政不服審査法の規定により、不服申立て(異議申し立て又は審査請求)をすることができる。

特別支給金は、社会復帰促進等事業のうち被災労働者等援護事業として行われるため、保険給付でなく、その決定に不服がある場合であっても、労働者災害補償保険審査官に対して審査請求することはできない。
よって、「労働者災害補償保険審査官に審査請求をすることができる」とした問題文は誤りとなる。
法38条1

特別加入の【承認】に係る処分に不服のある者は、【厚生労働大臣】に審査請求することができる。

また、特別加入の承認に対する不服申立については、前置主義が取られていないため、その裁決を経なくても、訴えの提起を行うことができる
法41条

特別支給金に係る不服申し立て事項は、労災法や特別支給金支給規則においても、明確な規定がない。はっきりしているのは、特別支給金は【社会復帰促進等事業】であって、労災法における【保険給付ではない】、ということ。判例でも、特別支給金に関し「行政としての性質を有すると解されるが、行政処分との解釈はなされない。」という曖昧な表現にとどめている。以上により、設問は誤り、とされますが、では特別支給に関する不服申し立てはどこへ?という疑問は今のところはっきりとは解消されません。
法38条、判例他


【試験問題】次の説明は、特別支給金に関する記述である。
特別支給金に関する決定に不服がある者は、労働者災害補償保険審査官に審査請求をし、その決定に不服がある者は、労働保険審査会に再審査請求をすることができる。 【解答】X

保険給付に関する決定に不服のある者は、労働者災害補償保険審査官に対して審査請求をし、その決定に不服のある者は、労働保険審査会に対して再審査請求をすることができる。 (労災保険法 38条)

特別支給金に関する決定に対する不服は行政不服審査法の規定を適用する。

保険給付の決定以外(例:特別支給金に関する決定)の処分に対する不服申立てなので、行政不服審査法による不服申立てに該当すると思われます。

なお、保険給付に関する決定の処分に対する不服の場合、その概要は、
・まず、労働者災害補償保険審査官に対する審査請求
・その決定に不服の場合または3ヶ月経過しても決定がない時は、労働保険審査会に対して再審査請求
となります。

行審法(全般)、労災法第38条および第39条、等

保険給付以外の処分に不服のある者は、行政不服審査法の規定により、不服申立て(異議申立て又は審査請求)をすることができる。

設問は【保険給付に関する】処分に対する規定。

【特別加入の不承認等】
厚生労働【大臣】へ【審査請求】→【裁判所】へ提訴
なお、この特別加入に関する処分【のみ】、大臣への【審査請求を介さずとも】裁判所へ提訴することが【可能】。当該処分以外の処分は、【不服申立て前置主義】により、審査請求若しくは再審査請求を経なければ、提訴できません。ちなみに、以上のことを【行政不服審査法】というのではありませんので、注意してくださいね。
法38条

㋑行政不服審査法の【特例】
【保険給付】に関する処分   【前置主義】

㋺行政不服審査法
【事業主】からの【費用徴収】 【前置主義】
【不正受給】に係る【費用徴収】【前置主義】
【特別加入】の不承認等

行政不服審査法とは・・
①処分行政庁に不服申立て→【異議申立て】
②①以外の上級行政庁へ不服申立て→【審査請求】
これに拠らない上記㋑はいわば【特例】として労災法に規定している訳です。審査官と審査会は労働局の上級行政庁ではありません。
法38条、安全衛生普及センター参考書

なお、設問の【特別支給金】の不服申立ては労災法・特別支給金支給規則のいずれにも明確な規定がなく、一部の判例においても、「行政としての性質を有するものと解されるにとどまり、行政処分との解釈はされない」という曖昧な表現にとどめている。よって、現在のところは他の方の回答にもある通り【保険給付に関する処分】ではなく、【社会復帰促進等事業に関する処分】と言えるため、規定が明確でないところから、設問は不正解、とするしかなさそうです。
法7条1項1号、法23条1項、判例http://www.zenkiren.com/jinji/hannrei/shoshi/07837.html


【試験問題】次の説明は、不服申立て等に関する記述である。
保険給付に関する処分の取消しの訴えは、この処分についての審査請求に対する労働者災害補償保険審査官の決定を経た後でなければ、提起することができないが、審査請求がされた日から3か月を経過しても決定がないときは、この限りでない。【解答】?


【試験問題】次の説明は、特別支給金に関する記述である。
特別支給金は、関連する保険給付と併せて支給されるものであるが、他の公的保険の給付が併給されて労災保険の保険給付の額が減額される場合でも、特別支給金の支給額が減額されることはない。 【解答】○

特別支給金は、保険給付に上積みして支給される金銭給付である。
定額支給(休業特別支給金は定率)の特別支給金部分と、特別給与を算定基礎とする特別年金・特別一時金の部分がある。
なお、休業特別支給金には、休業(補償)給付と同様の、特別年金・一時金には、年金給付基礎日額と同様のスライド制が適用される

特別支給金の保険給付との相違点
①前払一時金給付を受給しても支給停止されない
②費用徴収は行われない(不当利得の返還請求となる)
③損害賠償との調整は行われない
④社会保険との併給調整は行われない
⑤譲渡等の対象になる
⑥法38条の不服申し立ての対象にならない

ただし、【障害特別支給金】に関しては、
・併合繰上げ
・加重による差額支給
が存在するため、比較しておいてください。
特別支給金支給規則4条

第三十九条  前条第一項の審査請求及び同条第一項又は第二項の再審査請求については、行政不服審査法(昭和三十七年法律第百六十号)第二章第一節、第二節(第十八条及び第十九条を除く。)及び第五節の規定を適用しない。

第四十条  第三十八条第一項に規定する処分の取消しの訴えは、当該処分についての再審査請求に対する労働保険審査会の裁決を経た後でなければ、提起することができない。ただし、次の各号のいずれかに該当するときは、この限りでない。
一  再審査請求がされた日から三箇月を経過しても裁決がないとき。
二  再審査請求についての裁決を経ることにより生ずる著しい損害を避けるため緊急の必要があるときその他その裁決を経ないことにつき正当な理由があるとき。

第四十一条  徴収法第三十七条の規定は第三十一条第一項の規定による徴収金について、徴収法第三十八条の規定は第十二条の三第一項及び第二項並びに第三十一条第一項の規定による徴収金について準用する。

第六章 雑則

第四十二条  療養補償給付、休業補償給付、葬祭料、介護補償給付、療養給付、休業給付、葬祭給付、介護給付及び二次健康診断等給付を受ける権利は、二年を経過したとき、障害補償給付、遺族補償給付、障害給付及び遺族給付を受ける権利は、五年を経過したときは、時効によつて消滅する。


【試験問題】次の説明は、保険給付に関する記述である。
傷病補償年金又は傷病年金は、政府の職権によって支給が決定されるものであるから、これを受ける権利に関して労災保険法では時効について定めていないが、支給が決定された年金の支払期ごとに生ずる請求権については、会計法上の時効の規定が適用される。 【解答】○

傷病(補償)年金は、被災者の請求によらず政府が職権で給付を決定するものであり、基本権の裁定について時効の問題を生ずることは考えられないが、支分権については、会計法第30条の規定により5年で時効消滅することになる。
法42条、昭和52年3月30日発労徴21号・基発192号

労災保険法に規定する時効は基本権といわれ、支給を決定してもらうための請求権(申請期限)です。請求し、支給決定が行われた保険給付の支払を受ける権利(年金の場合は支払期月ごとに生ずる支払請求権=支分権)については、会計法の規定が適用され、消滅時効は5年となります。傷病補償年金又は傷病年金は、政府の職権によって支給が決定されるもので、これを受ける権利に関して労災保険法では時効について定めていませんが、支給が決定された年金の支払期ごとに生ずる支払請求権については、会計法上の時効の規定が適用されます。
会計法第30条

【労災法における時効】

【5年】
㋑遺族・障害関連給付(前払一時金を除く)
㋺支分権【すべての給付(現物給付の療養の給付除く)】

【2年】
㋩㋑以外の給付【傷病関連給付・現物支給の療養の給付は
除く】

【3年】
㋥指定病院等の政府に対する診療費請求権
注意すべきところは療養の給付(現物支給分)と傷病(補償)給付でしょうか。現物給付に時効はかかりません。

法42条、昭41基発73号、民法170条、安全衛生普及センター参考書


【試験問題】次の説明は、労働者災害補償保険に関する記述である。請求をして支給決定が行われた保険給付の支払を受ける権利(年金の場合は、各支払期月ごとに生ずる支払請求権)については、労働者災害補償保険法の規定によらず、公法上の金銭債権として会計法第30条の規定が適用されるので、その消滅時効は5年となる。【解答】?


【試験問題】次の説明は、労働者災害補償保険に関する記述である。保険給付における時効は、業務災害に関するものについては5年、通勤災害に関するものについては2年である。また、特別支給金の支給申請期間は2年である。 【解答】X

時効
障害(補償)給付        5年
障害(補償)年金、同差額一時金 5年
遺族(補償)給付        5年

※傷病(補償)年金には時効がない。
特別支給金の申請期間は、休業特別支給金が2年、他は5年です。
業務災害に関するものか通勤災害に関するものかによって、時効年数は変わらない。
次の説明は、保険給付等に関する記述である。
特別支給金は、業務災害及び通勤災害に関するすべての保険給付と関連して支給される。


【試験問題】次の説明は、介護補償給付等に関する記述である。
二次健康診断等給付は、社会復帰促進等事業として設置された病院若しくは診療所又は都道府県労働局長の指定する病院若しくは診療所において行われるが、その請求は、一次健康診断の結果を知った日から3か月以内に行わなければならない。 【解答】X

二次健康診断等給付の請求は「一次健康診断の結果を知った日から3カ月以内」ではなく「一次健康診断を受けた日から3カ月以内」に行わなければならない
二次健康診断等給付の請求は、所定の事項を記載した請求書を、当該二次健康診断等給付を受けようとする病院又は診療所(健診給付病院等)を経由して所轄都道府県労働局長に提出。原則として一次健康診断を受けた日から3カ月以内。
則18条の19

記憶があいまいだと、以下と混同します。

【請求】
・一次健康診断を【受けた日】から【3か月】以内

【時効】
・一次健康診断の【結果を了知し得る日】の翌日から起算
して【2年】を経過したとき
則18条の19第4項、法42条


【試験問題】
次の説明は、療養補償給付又は療養給付に関する記述である。
二次健康診断等給付は、労災保険法第29条第1項の社会復帰促進等事業(旧労働福祉事業)として設置された病院若しくは診療所又は都道府県労働局長が療養の給付を行う病院若しくは診療所として指定した病院若しくは診療所において行う。【解答】?


【試験問題】
次の説明は、労災保険に関する記述である。
療養補償給付、休業補償給付、葬祭料、介護補償給付、療養給付、休業給付、葬祭給付、介護給付及び二次健康診断等給付を受ける権利は、3年を経過したとき、障害補償給付、遺族補償給付、障害給付及び遺族給付を受ける権利は、5年を経過したときには、時効によって消滅する。 【解答】X

なし=傷病(補償)年金 ※職権でにて決定されるから
5年=障害・死亡に関するもので前払いされるもの以外
2年=上記以外
療養補償給付、休業補償給付、葬祭料、介護補償給付、療養給付、休業給付、葬祭給付、介護給付及び二次健康診断等給付を受ける権利は「2年」を経過したとき、時効によって消滅する。
療養(補償)給付のうち、療養の給付は現物給付であるため、その給付を受ける権利について時効の問題は生じない。
療養補償給付、休業補償給付、葬祭料、介護補償給付、療養給付、休業給付、葬祭給付、介護給付及び2次健康診断等給付を受ける権利は、「2年」を経過したとき、時効によって消滅する。
設問では、「3年」を経過したとき、となっているので、回答は【X】です。
法42条

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関連条文

  1. 厚年法 第百六十六条 (解散)

  2. 厚年法 第六十条 (年金額)

  3. 厚年法 第百六十五条 (連合会から基金への権利義務の移転及び年金給付等積立金の移換)

  4. 雇保法 第六十二条 (雇用安定事業)

  5. 最低賃金法 第十五条(特定最低賃金の決定等)

  6. 雇保法 第三十八条 (短期雇用特例被保険者)

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