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第二節 不当労働行為事件の審査の手続
(不当労働行為事件の審査の開始)
第二十七条 労働委員会は、使用者が第七条の規定に違反した旨の申立てを受けたときは、遅滞なく調査を行い、必要があると認めたときは、当該申立てが理由があるかどうかについて審問を行わなければならない。この場合において、審問の手続においては、当該使用者及び申立人に対し、証拠を提出し、証人に反対尋問をする充分な機会が与えられなければならない。
2 労働委員会は、前項の申立てが、行為の日(継続する行為にあつてはその終了した日)から一年を経過した事件に係るものであるときは、これを受けることができない。
(公益委員の除斥)
第二十七条の二 公益委員は、次の各号のいずれかに該当するときは、審査に係る職務の執行から除斥される。
一 公益委員又はその配偶者若しくは配偶者であつた者が事件の当事者又は法人である当事者の代表者であり、又はあつたとき。
二 公益委員が事件の当事者の四親等以内の血族、三親等以内の姻族又は同居の親族であり、又はあつたとき。
三 公益委員が事件の当事者の後見人、後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人又は補助監督人であるとき。
四 公益委員が事件について証人となつたとき。
五 公益委員が事件について当事者の代理人であり、又はあつたとき。
2 前項に規定する除斥の原因があるときは、当事者は、除斥の申立てをすることができる。
(公益委員の忌避)
第二十七条の三 公益委員について審査の公正を妨げるべき事情があるときは、当事者は、これを忌避することができる。
2 当事者は、事件について労働委員会に対し書面又は口頭をもつて陳述した後は、公益委員を忌避することができない。ただし、忌避の原因があることを知らなかつたとき、又は忌避の原因がその後に生じたときは、この限りでない。
(除斥又は忌避の申立てについての決定)
第二十七条の四 除斥又は忌避の申立てについては、労働委員会が決定する。
2 除斥又は忌避の申立てに係る公益委員は、前項の規定による決定に関与することができない。ただし、意見を述べることができる。
3 第一項の規定による決定は、書面によるものとし、かつ、理由を付さなければならない。
(審査の手続の中止)
第二十七条の五 労働委員会は、除斥又は忌避の申立てがあつたときは、その申立てについての決定があるまで審査の手続を中止しなければならない。ただし、急速を要する行為についてはこの限りでない。
(審査の計画)
第二十七条の六 労働委員会は、審問開始前に、当事者双方の意見を聴いて、審査の計画を定めなければならない。
2 前項の審査の計画においては、次に掲げる事項を定めなければならない。
一 調査を行う手続において整理された争点及び証拠(その後の審査の手続における取調べが必要な証拠として整理されたものを含む。)
二 審問を行う期間及び回数並びに尋問する証人の数
三 第二十七条の十二第一項の命令の交付の予定時期
3 労働委員会は、審査の現状その他の事情を考慮して必要があると認めるときは、当事者双方の意見を聴いて、審査の計画を変更することができる。
4 労働委員会及び当事者は、適正かつ迅速な審査の実現のため、審査の計画に基づいて審査が行われるよう努めなければならない。
(証拠調べ)
第二十七条の七 労働委員会は、当事者の申立てにより又は職権で、調査を行う手続においては第二号に掲げる方法により、審問を行う手続においては次の各号に掲げる方法により証拠調べをすることができる。
一 事実の認定に必要な限度において、当事者又は証人に出頭を命じて陳述させること。
二 事件に関係のある帳簿書類その他の物件であつて、当該物件によらなければ当該物件により認定すべき事実を認定することが困難となるおそれがあると認めるもの(以下「物件」という。)の所持者に対し、当該物件の提出を命じ、又は提出された物件を留め置くこと。
2 労働委員会は、前項第二号の規定により物件の提出を命ずる処分(以下「物件提出命令」という。)をするかどうかを決定するに当たつては、個人の秘密及び事業者の事業上の秘密の保護に配慮しなければならない。
3 労働委員会は、物件提出命令をする場合において、物件に提出を命ずる必要がないと認める部分又は前項の規定により配慮した結果提出を命ずることが適当でないと認める部分があるときは、その部分を除いて、提出を命ずることができる。
4 調査又は審問を行う手続に参与する使用者委員及び労働者委員は、労働委員会が第一項第一号の規定により当事者若しくは証人に出頭を命ずる処分(以下「証人等出頭命令」という。)又は物件提出命令をしようとする場合には、意見を述べることができる。
5 労働委員会は、職権で証拠調べをしたときは、その結果について、当事者の意見を聴かなければならない。
6 物件提出命令の申立ては、次に掲げる事項を明らかにしてしなければならない。
一 物件の表示
二 物件の趣旨
三 物件の所持者
四 証明すべき事実
7 労働委員会は、物件提出命令をしようとする場合には、物件の所持者を審尋しなければならない。
8 労働委員会は、物件提出命令をする場合には、第六項各号(第三号を除く。)に掲げる事項を明らかにしなければならない。
第二十七条の八 労働委員会が証人に陳述させるときは、その証人に宣誓をさせなければならない。
2 労働委員会が当事者に陳述させるときは、その当事者に宣誓をさせることができる。
第二十七条の九 民事訴訟法(平成八年法律第百九号)第百九十六条、第百九十七条及び第二百一条第二項から第四項までの規定は、労働委員会が証人に陳述させる手続に、同法第二百十条の規定において準用する同法第二百一条第二項の規定は、労働委員会が当事者に陳述させる手続について準用する。
(不服の申立て)
第二十七条の十 都道府県労働委員会の証人等出頭命令又は物件提出命令(以下この条において「証人等出頭命令等」という。)を受けた者は、証人等出頭命令等について不服があるときは、証人等出頭命令等を受けた日から一週間以内(天災その他この期間内に審査の申立てをしなかつたことについてやむを得ない理由があるときは、その理由がやんだ日の翌日から起算して一週間以内)に、その理由を記載した書面により、中央労働委員会に審査を申し立てることができる。
2 中央労働委員会は、前項の規定による審査の申立てを理由があると認めるときは、証人等出頭命令等の全部又は一部を取り消す。
3 中央労働委員会の証人等出頭命令等を受けた者は、証人等出頭命令等について不服があるときは、証人等出頭命令等を受けた日から一週間以内(天災その他この期間内に異議の申立てをしなかつたことについてやむを得ない理由があるときは、その理由がやんだ日の翌日から起算して一週間以内)に、その理由を記載した書面により、中央労働委員会に異議を申し立てることができる。
4 中央労働委員会は、前項の規定による異議の申立てを理由があると認めるときは、証人等出頭命令等の全部若しくは一部を取り消し、又はこれを変更する。
5 審査の申立て又は異議の申立ての審理は、書面による。
6 中央労働委員会は、職権で審査申立人又は異議申立人を審尋することができる。
(審問廷の秩序維持)
第二十七条の十一 労働委員会は、審問を妨げる者に対し退廷を命じ、その他審問廷の秩序を維持するために必要な措置を執ることができる。
(救済命令等)
第二十七条の十二 労働委員会は、事件が命令を発するのに熟したときは、事実の認定をし、この認定に基づいて、申立人の請求に係る救済の全部若しくは一部を認容し、又は申立てを棄却する命令(以下「救済命令等」という。)を発しなければならない。
2 調査又は審問を行う手続に参与する使用者委員及び労働者委員は、労働委員会が救済命令等を発しようとする場合は、意見を述べることができる。
3 第一項の事実の認定及び救済命令等は、書面によるものとし、その写しを使用者及び申立人に交付しなければならない。
4 救済命令等は、交付の日から効力を生ずる。
(救済命令等の確定)
第二十七条の十三 使用者が救済命令等について第二十七条の十九第一項の期間内に同項の取消しの訴えを提起しないときは、救済命令等は、確定する。
2 使用者が確定した救済命令等に従わないときは、労働委員会は、使用者の住所地の地方裁判所にその旨を通知しなければならない。この通知は、労働組合及び労働者もすることができる。
(和解)
第二十七条の十四 労働委員会は、審査の途中において、いつでも、当事者に和解を勧めることができる。
2 救済命令等が確定するまでの間に当事者間で和解が成立し、当事者双方の申立てがあつた場合において、労働委員会が当該和解の内容が当事者間の労働関係の正常な秩序を維持させ、又は確立させるため適当と認めるときは、審査の手続は終了する。
3 前項に規定する場合において、和解(前項の規定により労働委員会が適当と認めたものに限る。次項において同じ。)に係る事件について既に発せられている救済命令等は、その効力を失う。
4 労働委員会は、和解に金銭の一定額の支払又はその他の代替物若しくは有価証券の一定の数量の給付を内容とする合意が含まれる場合は、当事者双方の申立てにより、当該合意について和解調書を作成することができる。
5 前項の和解調書は、強制執行に関しては、民事執行法(昭和五十四年法律第四号)第二十二条第五号に掲げる債務名義とみなす。
6 前項の規定による債務名義についての執行文の付与は、労働委員会の会長が行う。民事執行法第二十九条後段の執行文及び文書の謄本の送達も、同様とする。
7 前項の規定による執行文付与に関する異議についての裁判は、労働委員会の所在地を管轄する地方裁判所においてする。
8 第四項の和解調書並びに第六項後段の執行文及び文書の謄本の送達に関して必要な事項は、政令で定める。
(再審査の申立て)
第二十七条の十五 使用者は、都道府県労働委員会の救済命令等の交付を受けたときは、十五日以内(天災その他この期間内に再審査の申立てをしなかつたことについてやむを得ない理由があるときは、その理由がやんだ日の翌日から起算して一週間以内)に中央労働委員会に再審査の申立てをすることができる。ただし、この申立ては、救済命令等の効力を停止せず、救済命令等は、中央労働委員会が第二十五条第二項の規定による再審査の結果、これを取り消し、又は変更したときは、その効力を失う。
2 前項の規定は、労働組合又は労働者が中央労働委員会に対して行う再審査の申立てについて準用する。
(再審査と訴訟との関係)
第二十七条の十六 中央労働委員会は、第二十七条の十九第一項の訴えに基づく確定判決によつて都道府県労働委員会の救済命令等の全部又は一部が支持されたときは、当該救済命令等について、再審査することができない。
(再審査の手続への準用)
第二十七条の十七 第二十七条第一項、第二十七条の二から第二十七条の九まで、第二十七条の十第三項から第六項まで及び第二十七条の十一から第二十七条の十四までの規定は、中央労働委員会の再審査の手続について準用する。この場合において、第二十七条の二第一項第四号中「とき」とあるのは「とき又は事件について既に発せられている都道府県労働委員会の救済命令等に関与したとき」と読み替えるものとする。
(審査の期間)
第二十七条の十八 労働委員会は、迅速な審査を行うため、審査の期間の目標を定めるとともに、目標の達成状況その他の審査の実施状況を公表するものとする。
第三節 訴訟
(取消しの訴え)
第二十七条の十九 使用者が都道府県労働委員会の救済命令等について中央労働委員会に再審査の申立てをしないとき、又は中央労働委員会が救済命令等を発したときは、使用者は、救済命令等の交付の日から三十日以内に、救済命令等の取消しの訴えを提起することができる。この期間は、不変期間とする。
2 使用者は、第二十七条の十五第一項の規定により中央労働委員会に再審査の申立てをしたときは、その申立てに対する中央労働委員会の救済命令等に対してのみ、取消しの訴えを提起することができる。この訴えについては、行政事件訴訟法(昭和三十七年法律第百三十九号)第十二条第三項から第五項までの規定は、適用しない。
3 前項の規定は、労働組合又は労働者が行政事件訴訟法の定めるところにより提起する取消しの訴えについて準用する。
(緊急命令)
第二十七条の二十 前条第一項の規定により使用者が裁判所に訴えを提起した場合において、受訴裁判所は、救済命令等を発した労働委員会の申立てにより、決定をもつて、使用者に対し判決の確定に至るまで救済命令等の全部又は一部に従うべき旨を命じ、又は当事者の申立てにより、若しくは職権でこの決定を取り消し、若しくは変更することができる。
(証拠の申出の制限)
第二十七条の二十一 労働委員会が物件提出命令をしたにもかかわらず物件を提出しなかつた者(審査の手続において当事者でなかつた者を除く。)は、裁判所に対し、当該物件提出命令に係る物件により認定すべき事実を証明するためには、当該物件に係る証拠の申出をすることができない。ただし、物件を提出しなかつたことについて正当な理由があると認められる場合は、この限りでない。
第四節 雑則
(中央労働委員会の勧告等)
第二十七条の二十二 中央労働委員会は、都道府県労働委員会に対し、この法律の規定により都道府県労働委員会が処理する事務について、報告を求め、又は法令の適用その他当該事務の処理に関して必要な勧告、助言若しくはその委員若しくは事務局職員の研修その他の援助を行うことができる。
(抗告訴訟の取扱い等)
第二十七条の二十三 都道府県労働委員会は、その処分(行政事件訴訟法第三条第二項に規定する処分をいい、第二十四条の二第四項の規定により公益委員がした処分及び同条第五項の規定により公益を代表する地方調整委員がした処分を含む。次項において同じ。)に係る行政事件訴訟法第十一条第一項(同法第三十八条第一項において準用する場合を含む。次項において同じ。)の規定による都道府県を被告とする訴訟について、当該都道府県を代表する。
2 都道府県労働委員会は、公益委員、事務局長又は事務局の職員でその指定するものに都道府県労働委員会の処分に係る行政事件訴訟法第十一条第一項の規定による都道府県を被告とする訴訟又は都道府県労働委員会を当事者とする訴訟を行わせることができる。
(費用弁償)
第二十七条の二十四 第二十二条第一項の規定により出頭を求められた者又は第二十七条の七第一項第一号(第二十七条の十七の規定により準用する場合を含む。)の証人は、政令の定めるところにより、費用の弁償を受けることができる。
(行政手続法の適用除外)
第二十七条の二十五 労働委員会がする処分(第二十四条の二第四項の規定により公益委員がする処分及び同条第五項の規定により公益を代表する地方調整委員がする処分を含む。)については、行政手続法(平成五年法律第八十八号)第二章及び第三章の規定は、適用しない。
(不服申立ての制限)
第二十七条の二十六 労働委員会がした処分(第二十四条の二第四項の規定により公益委員がした処分及び同条第五項の規定により公益を代表する地方調整委員がした処分を含む。)については、行政不服審査法(昭和三十七年法律第百六十号)による不服申立てをすることができない。
第五章 罰則
第二十八条 救済命令等の全部又は一部が確定判決によつて支持された場合において、その違反があつたときは、その行為をした者は、一年以下の禁錮若しくは百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
第二十八条の二 第二十七条の八第一項(第二十七条の十七の規定により準用する場合を含む。)の規定により宣誓した証人が虚偽の陳述をしたときは、三月以上十年以下の懲役に処する。
第二十九条 第二十三条の規定に違反した者は、一年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。
第三十条 第二十二条の規定に違反して報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、若しくは帳簿書類の提出をせず、又は同条の規定に違反して出頭をせず、若しくは同条の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した者は、三十万円以下の罰金に処する。
第三十一条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関して前条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても同条の刑を科する。
第三十二条 使用者が第二十七条の二十の規定による裁判所の命令に違反したときは、五十万円(当該命令が作為を命ずるものであるときは、その命令の日の翌日から起算して不履行の日数が五日を超える場合にはその超える日数一日につき十万円の割合で算定した金額を加えた金額)以下の過料に処する。第二十七条の十三第一項(第二十七条の十七の規定により準用する場合を含む。)の規定により確定した救済命令等に違反した場合も、同様とする。
第三十二条の二 次の各号のいずれかに該当する者は、三十万円以下の過料に処する。
一 正当な理由がないのに、第二十七条の七第一項第一号(第二十七条の十七の規定により準用する場合を含む。)の規定による処分に違反して出頭せず、又は陳述をしない者
二 正当な理由がないのに、第二十七条の七第一項第二号(第二十七条の十七の規定により準用する場合を含む。)の規定による処分に違反して物件を提出しない者
三 正当な理由がないのに、第二十七条の八(第二十七条の十七の規定により準用する場合を含む。)の規定による処分に違反して宣誓をしない者
第三十二条の三 第二十七条の八第二項(第二十七条の十七の規定により準用する場合を含む。)の規定により宣誓した当事者が虚偽の陳述をしたときは、三十万円以下の過料に処する。
第三十二条の四 第二十七条の十一(第二十七条の十七の規定により準用する場合を含む。)の規定による処分に違反して審問を妨げた者は、十万円以下の過料に処する。
第三十三条 法人である労働組合の清算人は、次の各号のいずれかに該当する場合には、五十万円以下の過料に処する。
一 第十三条の五に規定する登記を怠つたとき。
二 第十三条の七第一項又は第十三条の九第一項の公告を怠り、又は不正の公告をしたとき。
三 第十三条の九第一項の規定による破産手続開始の申立てを怠つたとき。
四 官庁又は総会に対し、不実の申立てをし、又は事実を隠ぺいしたとき。
2 前項の規定は、法人である労働組合の代表者が第十一条第二項の規定に基いて発する政令で定められた登記事項の変更の登記をすることを怠つた場合において、その代表者につき準用する。
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