高齢者法 第一条(目的)

–    第一章 総則

– (目的)
第一条  この法律は、国民の高齢期における適切な医療の確保を図るため、医療費の適正化を推進するための計画の作成及び保険者による健康診査等の実施に関する措置を講ずるとともに、高齢者の医療について、国民の共同連帯の理念等に基づき、前期高齢者に係る保険者間の費用負担の調整、後期高齢者に対する適切な医療の給付等を行うために必要な制度を設け、もつて国民保健の向上及び高齢者の福祉の増進を図ることを目的とする。
– (基本的理念)
第二条  国民は、自助と連帯の精神に基づき、自ら加齢に伴つて生ずる心身の変化を自覚して常に健康の保持増進に努めるとともに、高齢者の医療に要する費用を公平に負担するものとする。
– 2  国民は、年齢、心身の状況等に応じ、職域若しくは地域又は家庭において、高齢期における健康の保持を図るための適切な保健サービスを受ける機会を与えられるものとする。
– (国の責務)
第三条  国は、国民の高齢期における医療に要する費用の適正化を図るための取組が円滑に実施され、高齢者医療制度(第三章に規定する前期高齢者に係る保険者間の費用負担の調整及び第四章に規定する後期高齢者医療制度をいう。以下同じ。)の運営が健全に行われるよう必要な各般の措置を講ずるとともに、第一条に規定する目的の達成に資するため、医療、公衆衛生、社会福祉その他の関連施策を積極的に推進しなければならない。
– (地方公共団体の責務)
第四条  地方公共団体は、この法律の趣旨を尊重し、住民の高齢期における医療に要する費用の適正化を図るための取組及び高齢者医療制度の運営が適切かつ円滑に行われるよう所要の施策を実施しなければならない。
– (保険者の責務)
第五条  保険者は、加入者の高齢期における健康の保持のために必要な事業を積極的に推進するよう努めるとともに、高齢者医療制度の運営が健全かつ円滑に実施されるよう協力しなければならない。
– (医療の担い手等の責務)
第六条  医師、歯科医師、薬剤師、看護師その他の医療の担い手並びに医療法(昭和二十三年法律第二百五号)第一条の二第二項に規定する医療提供施設の開設者及び管理者は、前三条に規定する各般の措置、施策及び事業に協力しなければならない。
– (定義)
第七条  この法律において「医療保険各法」とは、次に掲げる法律をいう。
– 一  健康保険法(大正十一年法律第七十号)
– 二  船員保険法(昭和十四年法律第七十三号)
– 三  国民健康保険法(昭和三十三年法律第百九十二号)
– 四  国家公務員共済組合法(昭和三十三年法律第百二十八号)
– 五  地方公務員等共済組合法(昭和三十七年法律第百五十二号)
– 六  私立学校教職員共済法(昭和二十八年法律第二百四十五号)
– 2  この法律において「保険者」とは、医療保険各法の規定により医療に関する給付を行う全国健康保険協会、健康保険組合、市町村(特別区を含む。)、国民健康保険組合、共済組合又は日本私立学校振興・共済事業団をいう。
– 3  この法律において「加入者」とは、次に掲げる者をいう。
– 一  健康保険法の規定による被保険者。ただし、同法第三条第二項の規定による日雇特例被保険者を除く。
– 二  船員保険法の規定による被保険者
– 三  国民健康保険法の規定による被保険者
– 四  国家公務員共済組合法又は地方公務員等共済組合法に基づく共済組合の組合員
– 五  私立学校教職員共済法の規定による私立学校教職員共済制度の加入者
– 六  健康保険法、船員保険法、国家公務員共済組合法(他の法律において準用する場合を含む。)又は地方公務員等共済組合法の規定による被扶養者。ただし、健康保険法第三条第二項の規定による日雇特例被保険者の同法の規定による被扶養者を除く。
– 七  健康保険法第百二十六条の規定により日雇特例被保険者手帳の交付を受け、その手帳に健康保険印紙をはり付けるべき余白がなくなるに至るまでの間にある者及び同法の規定によるその者の被扶養者。ただし、同法第三条第二項ただし書の規定による承認を受けて同項の規定による日雇特例被保険者とならない期間内にある者及び同法第百二十六条第三項の規定により当該日雇特例被保険者手帳を返納した者並びに同法の規定によるその者の被扶養者を除く。

–    第二章 医療費適正化の推進

–     第一節 医療費適正化計画等

– (医療費適正化基本方針及び全国医療費適正化計画)
第八条  厚生労働大臣は、国民の高齢期における適切な医療の確保を図る観点から、医療に要する費用の適正化(以下「医療費適正化」という。)を総合的かつ計画的に推進するため、医療費適正化に関する施策についての基本的な方針(以下「医療費適正化基本方針」という。)を定めるとともに、五年ごとに、五年を一期として、医療費適正化を推進するための計画(以下「全国医療費適正化計画」という。)を定めるものとする。
– 2  医療費適正化基本方針においては、次に掲げる事項を定めるものとする。
– 一  次条第一項に規定する都道府県医療費適正化計画において定めるべき目標に係る参酌すべき標準その他の当該計画の作成に当たつて指針となるべき基本的な事項
– 二  次条第一項に規定する都道府県医療費適正化計画の達成状況の評価に関する基本的な事項
– 三  医療に要する費用の調査及び分析に関する基本的な事項
– 四  前三号に掲げるもののほか、医療費適正化の推進に関する重要事項
– 3  医療費適正化基本方針は、医療法第三十条の三第一項に規定する基本方針、介護保険法(平成九年法律第百二十三号)第百十六条第一項に規定する基本指針及び健康増進法(平成十四年法律第百三号)第七条第一項に規定する基本方針と調和が保たれたものでなければならない。
– 4  全国医療費適正化計画においては、次に掲げる事項を定めるものとする。
– 一  国民の健康の保持の推進に関し、国が達成すべき目標に関する事項
– 二  医療の効率的な提供の推進に関し、国が達成すべき目標に関する事項
– 三  前二号に掲げる目標を達成するために国が取り組むべき施策に関する事項
– 四  第一号及び第二号に掲げる目標を達成するための保険者、医療機関その他の関係者の連携及び協力に関する事項
– 五  計画期間における医療に要する費用の見通しに関する事項
– 六  計画の達成状況の評価に関する事項
– 七  前各号に掲げるもののほか、医療費適正化の推進のために必要な事項
– 5  厚生労働大臣は、医療費適正化基本方針及び全国医療費適正化計画を定め、又はこれを変更しようとするときは、あらかじめ、関係行政機関の長に協議するものとする。
– 6  厚生労働大臣は、医療費適正化基本方針及び全国医療費適正化計画を定め、又はこれを変更したときは、遅滞なく、これを公表するものとする。
– 7  厚生労働大臣は、全国医療費適正化計画の作成及び全国医療費適正化計画に基づく施策の実施に関して必要があると認めるときは、保険者、医療機関その他の関係者に対して必要な協力を求めることができる。
– (都道府県医療費適正化計画)
第九条  都道府県は、医療費適正化基本方針に即して、五年ごとに、五年を一期として、当該都道府県における医療費適正化を推進するための計画(以下「都道府県医療費適正化計画」という。)を定めるものとする。
– 2  都道府県医療費適正化計画においては、医療費適正化を推進することによる計画期間における医療に要する費用の見通しに関する事項を定めるものとする。
– 3  都道府県医療費適正化計画においては、前項に規定する事項のほか、おおむね次に掲げる事項について定めるものとする。
– 一  住民の健康の保持の推進に関し、当該都道府県において達成すべき目標に関する事項
– 二  医療の効率的な提供の推進に関し、当該都道府県において達成すべき目標に関する事項
– 三  前二号に掲げる目標を達成するために都道府県が取り組むべき施策に関する事項
– 四  第一号及び第二号に掲げる目標を達成するための保険者、医療機関その他の関係者の連携及び協力に関する事項
– 五  当該都道府県における医療に要する費用の調査及び分析に関する事項
– 六  計画の達成状況の評価に関する事項
– 4  都道府県医療費適正化計画は、医療法第三十条の四第一項に規定する医療計画、介護保険法第百十八条第一項に規定する都道府県介護保険事業支援計画及び健康増進法第八条第一項に規定する都道府県健康増進計画と調和が保たれたものでなければならない。
– 5  都道府県は、都道府県医療費適正化計画を定め、又はこれを変更しようとするときは、あらかじめ、関係市町村に協議しなければならない。
– 6  都道府県は、都道府県医療費適正化計画を定め、又はこれを変更したときは、遅滞なく、これを公表するよう努めるとともに、厚生労働大臣に提出するものとする。
– 7  都道府県は、都道府県医療費適正化計画の作成及び都道府県医療費適正化計画に基づく施策の実施に関して必要があると認めるときは、保険者、医療機関その他の関係者に対して必要な協力を求めることができる。
– (厚生労働大臣の助言)
第十条  厚生労働大臣は、都道府県に対し、都道府県医療費適正化計画の作成の手法その他都道府県医療費適正化計画の作成上重要な技術的事項について必要な助言をすることができる。
– (計画の進捗状況に関する評価)
第十一条  都道府県は、厚生労働省令で定めるところにより、都道府県医療費適正化計画を作成した年度(毎年四月一日から翌年三月三十一日までをいう。以下同じ。)の翌々年度において、当該計画の進捗状況に関する評価を行うとともに、その結果を公表するものとする。
– 2  厚生労働大臣は、厚生労働省令で定めるところにより、全国医療費適正化計画の作成年度の翌々年度において、当該計画の進捗状況に関する評価を行うとともに、その結果を公表するものとする。
– (計画の実績に関する評価)
第十二条  都道府県は、厚生労働省令で定めるところにより、都道府県医療費適正化計画の期間の終了の日の属する年度の翌年度において、当該計画に掲げる目標の達成状況及び施策の実施状況に関する調査及び分析を行い、当該計画の実績に関する評価を行うものとする。
– 2  都道府県は、前項の評価を行つたときは、厚生労働省令で定めるところにより、その内容を厚生労働大臣に報告するとともに、これを公表するものとする。
– 3  厚生労働大臣は、厚生労働省令で定めるところにより、全国医療費適正化計画の期間の終了の日の属する年度の翌年度において、当該計画に掲げる目標の達成状況及び施策の実施状況に関する調査及び分析を行い、全国医療費適正化計画の実績に関する評価を行うとともに、前項の報告を踏まえ、関係都道府県の意見を聴いて、各都道府県における都道府県医療費適正化計画の実績に関する評価を行うものとする。
– 4  厚生労働大臣は、前項の評価を行つたときは、これを公表するものとする。
– (診療報酬に係る意見の提出等)
第十三条  都道府県は、第十一条第一項又は前条第一項の評価の結果、第九条第三項第二号に掲げる目標の達成のために必要があると認めるときは、厚生労働大臣に対し、健康保険法第七十六条第二項の規定による定め及び同法第八十八条第四項の規定による定め並びに第七十一条第一項に規定する療養の給付に要する費用の額の算定に関する基準及び第七十八条第四項に規定する厚生労働大臣が定める基準(次項及び次条第一項において「診療報酬」という。)に関する意見を提出することができる。
– 2  厚生労働大臣は、前項の規定により都道府県から意見が提出されたときは、当該意見に配慮して、診療報酬を定めるように努めなければならない。
– (診療報酬の特例)
第十四条  厚生労働大臣は、第十二条第三項の評価の結果、第八条第四項第二号及び各都道府県における第九条第三項第二号に掲げる目標を達成し、医療費適正化を推進するために必要があると認めるときは、一の都道府県の区域内における診療報酬について、地域の実情を踏まえつつ、適切な医療を各都道府県間において公平に提供する観点から見て合理的であると認められる範囲内において、他の都道府県の区域内における診療報酬と異なる定めをすることができる。
– 2  厚生労働大臣は、前項の定めをするに当たつては、あらかじめ、関係都道府県知事に協議するものとする。
– (資料提出の協力及び助言等)
第十五条  厚生労働大臣又は都道府県知事は、第十一条第一項若しくは第二項の評価又は第十二条第一項若しくは第三項の評価を行うために必要があると認めるときは、保険者、医療機関その他の関係者に対し、必要な資料の提出に関し、協力を求めることができる。
– 2  厚生労働大臣及び都道府県知事は、第十一条第一項若しくは第二項の評価又は第十二条第一項若しくは第三項の評価に基づき、保険者又は医療機関に対し、必要な助言又は援助をすることができる。
– (医療費適正化計画の作成等のための調査及び分析等)
第十六条  厚生労働大臣は、全国医療費適正化計画及び都道府県医療費適正化計画の作成、実施及び評価に資するため、次に掲げる事項に関する情報について調査及び分析を行い、その結果を公表するものとする。
– 一  医療に要する費用に関する地域別、年齢別又は疾病別の状況その他の厚生労働省令で定める事項
– 二  医療の提供に関する地域別の病床数の推移の状況その他の厚生労働省令で定める事項
– 2  保険者及び第四十八条に規定する後期高齢者医療広域連合は、厚生労働大臣に対し、前項に規定する調査及び分析に必要な情報を、厚生労働省令で定める方法により提供しなければならない。
– (支払基金等への委託)
第十七条  厚生労働大臣は、前条第一項に規定する調査及び分析に係る事務の一部を社会保険診療報酬支払基金法(昭和二十三年法律第百二十九号)による社会保険診療報酬支払基金(以下「支払基金」という。)又は国民健康保険法第四十五条第五項に規定する国民健康保険団体連合会(以下「国保連合会」という。)その他厚生労働省令で定めるものに委託することができる。

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