健保法 第一条 (目的)

健康保険法

(大正十一年四月二十二日法律第七十号)

先日亡くなりましたが、おばあちゃんが大正産まれでした。亡くなった人が生まれた時期に作られたルールで生活してるって時代を感じます。令和、平成、昭和と3元号を挟んだ大正か…古いですね。

第一章 総則(第一条―第三条)
第二章 保険者
第一節 通則(第四条―第七条)
第二節 全国健康保険協会(第七条の二―第七条の四十二)
第三節 健康保険組合(第八条―第三十条)
第三章 被保険者
第一節 資格(第三十一条―第三十九条)
第二節 標準報酬月額及び標準賞与額(第四十条―第四十七条)
第三節 届出等(第四十八条―第五十一条の二)
第四章 保険給付
第一節 通則(第五十二条―第六十二条)
第二節 療養の給付及び入院時食事療養費等の支給
第一款 療養の給付並びに入院時食事療養費、入院時生活療養費、保険外併用療養費及び療養費の支給(第六十三条―第八十七条)
第二款 訪問看護療養費の支給(第八十八条―第九十六条)
第三款 移送費の支給(第九十七条)
第四款 補則(第九十八条)
第三節 傷病手当金、埋葬料、出産育児一時金及び出産手当金の支給(第九十九条―第百九条)
第四節 家族療養費、家族訪問看護療養費、家族移送費、家族埋葬料及び家族出産育児一時金の支給(第百十条―第百十四条)
第五節 高額療養費及び高額介護合算療養費の支給(第百十五条・第百十五条の二)
第六節 保険給付の制限(第百十六条―第百二十二条)
第五章 日雇特例被保険者に関する特例
第一節 日雇特例被保険者の保険の保険者(第百二十三条)
第二節 標準賃金日額等(第百二十四条―第百二十六条)
第三節 日雇特例被保険者に係る保険給付(第百二十七条―第百四十九条)
第六章 保健事業及び福祉事業(第百五十条)
第七章 費用の負担(第百五十一条―第百八十三条)
第八章 健康保険組合連合会(第百八十四条―第百八十八条)
第九章 不服申立て(第百八十九条―第百九十二条)
第十章 雑則(第百九十三条―第二百七条)
第十一章 罰則(第二百七条の二―第二百二十一条)
附則

221条と非常にボリュームのある法令です。さっとタイトルを眺めても「給付」など計算が多いため苦労するポイントですので、「楽ではない」と覚悟を決めて、読み進めます。ただ、生活していく中で身近な事柄に対する法令なのでイメージはし易いのかなとも思います。

第一章 総則

第一条 (目的)  この法律は、労働者の業務外の事由による疾病、負傷若しくは死亡又は出産及びその被扶養者の疾病、負傷、死亡又は出産に関して保険給付を行い、もって国民の生活の安定と福祉の向上に寄与することを目的とする。

この法令の目的と手段は、「労働者の業務外の疾病、負傷、若しくは死亡、出産 及び被扶養者への保険給付」をすることで、「国民の生活の安定と福祉の向上」を目指す法律です。

他の法令と比較してみると、例えば、「労働者災害補償保険法」では、目的は「業務上の事由又は通勤による労働者の負傷、疾病、障害、死亡等に対して迅速かつ公正な保護をするため、必要な保険給付」と書いてあります。

業務上、通勤での負傷・疾病にかかった労働者の社会復帰の促進であり、労働者とその遺族の援護であり「労働者の安全及び衛生の確保等を図り、もつて労働者の福祉の増進に寄与する」をする事にあります。

もう一つ比較してみると例えば、「船員保険法」では、

「船員の職務外の事由による疾病、負傷若しくは死亡又は出産及びその被扶養者の疾病、負傷、死亡又は出産に関して保険給付を行うとともに、労働者災害補償保険による保険給付と併せて船員の職務上の事由又は通勤による疾病、負傷、障害又は死亡に関して保険給付を行うこと等により、船員の生活の安定と福祉の向上に寄与することを目的とする。」とありますが、こちらは職務外の疾病、負傷、死亡、出産に対する給付で、その被扶養者の疾病、負傷、死亡、出産、も含みます。各法令の目的の差に思いを馳せながら条文を楽しめたらなと思います。

話を戻すと健康保険は、会社員であるなどの労働者が対象となります。

先程比較した「労働者災害補償保険法」との関係ですが、

(1)被保険者の疾病

被保険者の疾病、負傷、死亡でも、その発生原因が被保険者の業務上の負傷又は通勤によるときは、健康保険による保険給付は行われず、労災法に基づく保険給付又は労基法に基づく災害補償が行われます。

(2)被保険者の疾病

被保険者の疾病、負傷、死亡について、労働基準監督署に認定を申請中である未決定期間については、一応業務上の傷病として取り扱いをします。

そして最終的に業務上の傷病でないと認定され、更に健康保険による業務外と認定された場合に、さかのぼって健康保険の保険を行うとされています。(昭28.4.9保文発2014号)

(3)法人の代表者

法人の代表者又は業務執行者(以下「代表者等」という)は、労基法上の労働者に該当しないため、労災保険法に基づく給付は行われません。しかし、極めて小規模な事業所の法人の代表者等については、次のように取扱われます。

①被保険者が5人未満である適用事業所に所属する法人の代表者等で一般の従業員と著しく異ならないような労務に従事している者

この方のの業務遂行の過程において業務に起因して生じた傷病にしても、健康保険による保険給付(傷病手当金を除く。)の対象となります。

②法人の代表者等のうち、労災保険法の特別加入をしている者及び労基法上の労働者の地位を併せ保有すると認められる者であって、それによりその者の業務遂行の過程において、業務に起因して生じた傷病に関し労災保険による保険給付が行われてしかるべき者

健康保険による保険給付は行いません。(平15.7.1保発0701001号)

(基本的理念)
第二条  健康保険制度については、これが医療保険制度の基本をなすものであることにかんがみ、高齢化の進展、疾病構造の変化、社会経済情勢の変化等に対応し、その他の医療保険制度及び後期高齢者医療制度並びにこれらに密接に関連する制度と併せてその在り方に関して常に検討が加えられ、その結果に基づき、医療保険の運営の効率化、給付の内容及び費用の負担の適正化並びに国民が受ける医療の質の向上を総合的に図りつつ、実施されなければならない。

基本理念と18年改正について書いてありますが、健康保険法の変遷は大正11年に「健康保険法」が制定され、 関東大震災のため制定から時間がかかって、全面施行は昭和2年です。

健康保険制度の基木的理念に基づき、医療保険制度の将来にわたる持続的かつ安定的な運用を確保するため、医療費適正化の総合的な推進、新たな高齢者医療制度の創設、保険給付の再編·統合等の措置を講ずる医療保険制度の改正が、平成18年におこなわれました。

これに基づいて、平成20年4月より、従来の老人保健制度(老人保健法)に代わり新たな高齢者医療制度(高齢者の医療の確保に関する法律)が実施されました。

概要は、次の通りです。

(1)後期高齢者医療制度

全市町村が加入し、都道府県単位で設ける後期高齢者医療広域連合が運営する独立した医療制度で、次のいずれかに該当する方は、従来加入していた医療保険制度から離れて、この制度の対象となります。

①75歳以上の者

②65歳以上75歳未満の者で、政令で定める程度の障害の状態にある旨の後期高齢者医療広域連合の認定を受けたもの

後期高齢者医療制度に係る財政負担については、その約5割を公費、約4割を医療保険制度の保険者からの「後期高齢者支援金」、残りの1割を本人から徴収する保険料でまかなわれます。

(2)前期高齢者医療制度

65歳以上75歳未満の者((1)に該当するものを除くは、現在の医療保険制度に加入した状態で、「前期高齢者医療制度」の対象とされます。

これは、医療保険制度間に生じていた財政負担の不均衡を調整するために創設されたものです。

これにより各保険者は、この制度の運営に要する「前期高齢者納付金」の納付が必要となります。

※従来、各保険者は、老人保健制度への老人保健拠出金、退職者医療制度への退職者給付拠出金を拠出していましたが、平成20年4月より、老人保健拠出金が廃止され、新たに、後期高齢者医療制度への後期高齢者支援金と前期高齢者医療制度への前期高齢者納付金の納付へ変わります。


【試験問題】
次の説明は、健康保険法に関する記述である。政府は、健康保険法等の一部を改正する法律(平成18年法律第83号)の施行後5年を目途として、この法律の施行の状況等を勘案し、この法律による改正後の高齢者の医療の確保に関する法律の規定に基づく規制の在り方について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずることになっている。
【解答】

平成18年法附則第2条第1項(検討)

第二条  政府は、この法律の施行後五年を目途として、この法律の施行の状況等を勘案し、この法律により改正された医療保険各法及び第七条の規定による改正後の高齢者の医療の確保に関する法律(以下「高齢者医療確保法」という。)の規定に基づく規制の在り方について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする。

2  高齢者医療確保法による高齢者医療制度については、制度の実施状況、保険給付に要する費用の状況、社会経済の情勢の推移等を勘案し、第七条の規定の施行後五年を目途としてその全般に関して検討が加えられ、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置が講ぜられるべきものとする。(平成18年法附則第2条第1項第2項)

参考:厚生労働省案2013年度導入の新しい高齢者医療制度について、65歳以上を原則として市町村の運営する国民健康保険(国保)に加入させた上で都道府県単位で財政運営する案を高齢者医療制度改革会議に示した。(厚労省案発表 6月23日)

法2条の基本的理念の条文と勘違いしやすいところで、注意が必要です。

「健康保険制度については、(中略)その他の医療保険制度及び後期高齢者医療制度並びにこれらに密接に関連する制度と併せてその在り方に関して【常に】検討が加えられ、(後略)」上記条文の「常に」を「5年」に変えて出題した例があります。

注意が必要です。設問は附則条文で、あくまで健康保険法と高齢者の医療の確保に関する法律との関連についての検討の内容ですから、【5年】ごとにつながります。なお、高齢者医療確保法にも5年ごととする根拠条文があります。
(法2条、法附則2条2項(平18.6.21第83号)、高齢者の医療の確保に関する法律8条)

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関連条文

  1. 障害者雇用促進法 第四十九条 (納付金関係業務)

  2. 労働組合法22

  3. 高齢者法 第百五十八条(研究開発の推進)

  4. 介護保険法 第四十八条(施設介護サービス費の支給)

  5. 労基法 第三十五条(休日)

  6. 健保法 第百五十条 保健事業

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