労基法 第百十四条(付加金の支払)

(付加金の支払)
第百十四条
裁判所は、第二十条、第二十六条若しくは第三十七条の規定に違反した使用者又は第三十九条第七項の規定による賃金を支払わなかつた使用者に対して、労働者の請求により、これらの規定により使用者が支払わなければならない金額についての未払金のほか、これと同一額の付加金の支払を命ずることができる。ただし、この請求は、違反のあつた時から二年以内にしなければならない。


【試験問題】
次の説明は、労働基準法に定める賃金等に関する記述である。最高裁判所の判例によると、労働基準法第114条の付加金支払義務は、使用者が同法第20条の予告手当等を支払わない場合に、当然発生するものではなく、労働者の請求により裁判所がその支払を命ずることによって、初めて発生するものと解すべきであるから、使用者に同法第20条の違反があっても、既に予告手当に相当する金額の支払を完了し使用者の義務違反の状況が消滅した後においては、労働者は同法第114条による付加金請求の申立をすることができないものと解すべきである、とされている。
【解答】

裁判所は、第二十条、第二十六条若しくは第三十七条の規定に違反した使用者又は第三十九条第六項の規定による賃金を支払わなかつた使用者に対して、労働者の請求により、これらの規定により使用者が支払わなければならない金額についての未払金のほか、これと同一額の付加金の支払を命ずることができる。ただし、この請求は、違反のあつた時から二年以内にしなければならない。 (労働基準法 114条)

付加金については、114条の条文どおりです。

この最高裁の判例(細谷服装事件 最高裁第2二小判 昭35.3.11)は少し話がこみいっています。

① 事件のあらまし

ある洋服製造会社の労働者が、昭和24年8月に解雇の通知を受けた。このとき、使用者は20条による解雇予告期間を置かず、予告手当も支払いませんでした。

そこで、労働者は8月分の未払い賃金及び退職金の支払いを求めて提訴したところ、一審の口頭弁論終結日に、未払賃金と予告手当が支払われましたが、裁判では敗訴しました。

しかし労働者は納得せず、未払賃金と予告手当を支払った時点まで解雇の効力が発生していないと主張してこの間の賃金支払いと、未払賃金と予告手当不払いに対する付加金の請求について 、控訴して争いました。

② 解雇の時期についての判決

「20条の意図するところが、解雇により失職する労働者に対し他に就職の口を求めるに必要なる所定期間内の生活を保障せんとするにあることを思えば、予告期間を設けず且つ予告手当の支払もせずになした解雇の意思表示は、これにより即時解雇としての効力を生じ得ない。

けれども、その解雇通告の本旨が、使用者において即時であると否とを問わず、要するにその労働者を解雇しようとするにあって即時の解雇が認められない以上解雇しないというのでない限り、右解雇通告はその後30日の期間経過をもってその効力を生ずるに至るものと解するを相当とすべきであり、かく解したからとて労働者の保護を薄からしめることはない。

それ故、解雇の通告後(予告手当を支払わなくとも)30日経過とともに、解雇の効力を生じる」

③ 付加金についての判決

「114条による附加金なるものは、労働基準法の規定違背に対する一種の制裁たる性質を有し、労働者の請求に基き裁判所の命令によって課せられ、その命令をもって始めて使用者の支払義務が発生するのであり、右規定違反あると同時に、労働者が当然使用者に対し附加金支払請求権を取得するものと解すべきでない。

よって、解雇に当って20条の違反があっても、その後前記の如く予告手当に相当する金額の支払を完了し、附加金請求の申立前に既に被控訴人の義務違背の状況が消滅している以上、もはや附加金の支払を命ずべき要件は存せざるに至ったものといわなければならない」

付加金の請求対象は・・・解雇予告手当(20条)、休業手当、時間外・休日および深夜の割増賃金、年次有給休暇中の賃金

付加金とは・・・使用者が支払わなければならない金額について未払い金のほか、これと同一額の付加金の支払いを命ずることが出来る(簡単に書くと倍額貰える制度)。請求は違反があったときから2年以内にしなければならない。

すでに予告手当に相当する金額の支払いが完了しているので裁判うんぬんではなく、付加金の請求は出来ない(使用者の義務が果たされたと解釈)。

そのため答えは○となります。

付加金の対象となる項目は、①解雇予告手当、②休業手当、時間外・休日および深夜の③割増賃金、④年次有給休暇中の賃金の4つあります。

(遊)覚えるゴロ合わせとして、以前習ったゴロ合わせとして、②休業(きゅう)④年次(ねん)でお③割増(わり)①解雇(かい)の各文字を取って、「九年で終わりかい」と覚えると覚えやすいと思います。


【試験問題】
次の説明は、労働基準法に定める賃金等に関する記述である。裁判所は、労働基準法第26条(休業手当)、第37条(割増賃金)などの規定に違反した使用者に対して、労働者の請求により、これらの規定により使用者が支払わなければならない金額についての未払金のほか、これと同一額の付加金の支払を命ずることができることとされているが、この付加金の支払に関する規定は、同法第24条第1項に規定する賃金の全額払の義務に違反して賃金を支払わなかった使用者に対しても、同様に適用される。
【解答】
×


【試験問題】次の説明は、労働基準法に定める賃金等に関する記述である。裁判所は、労働基準法第20条(解雇予告手当)、第26条(休業手当)若しくは第37条(割増賃金)の規定に違反した使用者又は第39条第7項の規定による賃金(年次有給休暇中の賃金)を支払わなかった使用者に対して、労働者の請求により、これらの規定により使用者が支払わなければならない金額についての未払金のほか、これと同一額の付加金の支払を命ずることができることとされているが、この付加金の支払に関する規定は、同法第24条第1項に規定する賃金の全額払の義務に違反して賃金を支払わなかった使用者に対しては適用されない。
【解答】

(付加金の支払)
裁判所は、第二十条、第二十六条若しくは第三十七条の規定に違反した使用者又は第三十九条第七項の規定による賃金を支払わなかつた使用者に対して、労働者の請求により、これらの規定により使用者が支払わなければならない金額についての未払金のほか、これと同一額の付加金の支払を命ずることができる。ただし、この請求は、違反のあつた時から二年以内にしなければならない。(労基法第百十四条)


第24条第1項に規定する賃金の全額払の義務に違反して賃金は含まれない。

未払い賃金ではなんでも対象になるわけではないですし、解雇予告手当は賃金ではありません。

付加金の支払いに関する規定は、賃金の全額払の義務に違反して賃金を支払わなかった使用者に対しては適用されない。裁判所が、労働者の請求により使用者に付加金の支払を命じることができるのは、使用者が法20条(解雇予告手当)、法26条(休業手当)若しくは法37条(割増賃金)の規定に違反した場合、又は法39条7項(年次有給休暇中の賃金)の規定による賃金を支払わなかった場合に限られている。(法114条)


【試験問題】
次の説明は、労働基準法に定める監督機関、雑則、罰則等に関する記述である。労働基準法に基づいて支払うべき賃金又は手当を使用者が支払わなかったときには、裁判所は、労働者の請求により、使用者が支払わなければならない未払金のほか、これと同一額の付加金の支払を命じなければならない。
【解答】
×

(時効)
第百十五条
この法律の規定による賃金(退職手当を除く。)、災害補償その他の請求権は二年間、この法律の規定による退職手当の請求権は五年間行わない場合においては、時効によつて消滅する。

(経過措置)
第百十五条の二
この法律の規定に基づき命令を制定し、又は改廃するときは、その命令で、その制定又は改廃に伴い合理的に必要と判断される範囲内において、所要の経過措置(罰則に関する経過措置を含む。)を定めることができる。

(適用除外)
第百十六条
第一条から第十一条まで、次項、第百十七条から第百十九条まで及び第百二十一条の規定を除き、この法律は、船員法(昭和二十二年法律第百号)第一条第一項に規定する船員については、適用しない。
2  この法律は、同居の親族のみを使用する事業及び家事使用人については、適用しない。

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関連条文

  1. 健保法 第百二十四条 (標準賃金日額)

  2. 厚年法 第百二条 罰則

  3. 雇保法 第七十九条 (立入検査)

  4. 徴収法 第二十五条 (印紙保険料の決定及び追徴金)

  5. 中退金法 第五十四条 (被共済者に関する制限)

  6. 健保法 第百十条(家族療養費)

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