労災法 第七条 保険給付

第三章 保険給付

第一節 通則

第七条  この法律による保険給付は、次に掲げる保険給付とする。
一  労働者の業務上の負傷、疾病、障害又は死亡(以下「業務災害」という。)に関する保険給付
二  労働者の通勤による負傷、疾病、障害又は死亡(以下「通勤災害」という。)に関する保険給付
三  二次健康診断等給付
2  前項第二号の通勤とは、労働者が、就業に関し、次に掲げる移動を、合理的な経路及び方法により行うことをいい、業務の性質を有するものを除くものとする。
一  住居と就業の場所との間の往復
二  厚生労働省令で定める就業の場所から他の就業の場所への移動
三  第一号に掲げる往復に先行し、又は後続する住居間の移動(厚生労働省令で定める要件に該当するものに限る。)
3  労働者が、前項各号に掲げる移動の経路を逸脱し、又は同項各号に掲げる移動を中断した場合においては、当該逸脱又は中断の間及びその後の同項各号に掲げる移動は、第一項第二号の通勤としない。ただし、当該逸脱又は中断が、日常生活上必要な行為であつて厚生労働省令で定めるものをやむを得ない事由により行うための最小限度のものである場合は、当該逸脱又は中断の間を除き、この限りでない。


【試験問題】次の説明は、保険給付等に関する記述である。労災保険の保険給付には、業務災害に関する保険給付及び通勤災害に関する保険給付のほか、業務上の事由及び通勤のいずれにも関連する保険給付として、二次健康診断等給付がある。 【解答】×

労災保険法 2条の2
「労働者災害補償保険は、第一条の目的を達成するため、業務上の事由又は通勤による労働者の負傷、疾病、障害、死亡等に関して保険給付を行うほか、社会復帰促進等事業を行うことができる。」

労災保険法の保険給付は、次のとおりです。

1.業務災害に関する保険給付
2.通勤災害に関する保険給付
3.二次健康診断等給付

上記のうち「二次健康診断等給付」は、<span style=”color: #0000ff;”>業務上の事由による脳血管疾患及び心臓疾患の発生を予防するための保険給付ですが、

通勤災害による災害の発生を予防するための保険給付は行われていません。そのため、問題文は誤りとなります。(法7条1項、法26条1項)

二次健康診断給付は、恒常的な長時間の時間外労働や職場のストレス等を原因とする脳血管疾患及び心臓疾患の発生が増加していることから、これらの疾患の予防を図るため、健康診断における血圧検査、血液検査等の結果、労働者に異常の所見があると診断された場合に、その労働者に対し、医師による二次健康診断及びその結果に基づく保健指導を労災保険の保険給付として行うものです。そのため業務の性質を有する業務災害と関連して給付されるものです。


【試験問題】次の説明は、保険給付の事由等に関する記述である。なお、以下において「労災保険法」とは「労働者災害補償保険法」のことであり、「労災保険」とは「労働者災害補償保険」のことである。労災保険法による保険給付としては、業務災害又は通勤災害が発生した場合の保険給付のほか、業務上の事由によると通勤によるとを問わず、災害の発生を予防するための保険給付も行われる。
【解答】×


【試験問題】業務上災害等に関する次の記述について、適切か否か答えよ。
事業場施設内における業務に就くための出勤又は業務を終えた後の退勤で「業務」と接続しているものは、業務行為そのものではないが、業務に通常付随する準備後始末行為と認められている。したがって、その行為中の災害については、労働者の積極的な私的行為又は恣意行為によるものと認められず、加えて通常発生しうるような災害である場合は、業務上とされている。 【解答】○

事業場施設内(駐車場)における業務に就くための出勤または業務を終えた後の退勤で「業務」と接続しているものは、業務行為そのものではないが、業務に通常付随する準備後始末行為と認められる。本件災害に係る退勤は就業直後の行為であって業務と接続する行為と認められること当該災害が労働者の積極的な私的行為または恣意行為によるものとは認められないこと及び当該災害は、通常発生しうるような災害であることからみて事業主の支配下に伴う危険が現実化した災害であると認められる。従って本件については、業務災害として取り扱う。
(昭和50年の行政通達)


【試験問題】次の説明は、労働者災害補償保険法に関する記述である。通勤としての移動の経路を逸脱し、又は移動を中断した場合における逸脱又は中断の間及びその後の移動は、原則として通勤に該当しない。 【解答】○

原則

逸脱・中断の間→通勤としない
その後の往復 →通勤としない
(法7条3項)

例外

日常生活上必要な行為・・以下のものは通勤と認められる。

①日用品の購入その他これに準ずる行為
②職業訓練、学校において行われる教育等を受ける行為
③選挙権の行使④病院等で診察又は治療を受けること
⑤要介護状態にある配偶者、子、父母、配偶者の父母、同居しかつ扶養している孫、祖父母、兄弟姉妹の介護(継続的に又は反復して行われるもの)

原則としては通勤に該当しません。ただし、次の場合においてはこの限りではない。

「ただし、当該逸脱又は中断が、日常生活上必要な行為であって厚生労働省令で定めるものをやむを得ない事由により行うための最小限度のものである場合は、当該逸脱又は中断の間を除き、この限りではない。」

設問に【原則として】が抜けていれば、誤りの文章だったかもしれません。


【試験問題】通勤災害とは、労働者の通勤による負傷、疾病、障害又は死亡をいうが、次の説明は、この通勤に関する記述である。運動部の練習に参加する目的で、午後の遅番の出勤者であるにもかかわらず、朝から住居を出る等、所定の就業開始時刻とかけ離れた時刻に会社に行く場合も、通勤に該当する。【解答】×

就業との関連性がないため通勤に該当しません。

出勤と就業との関連性(S48.11.22基発644)

動部の練習に参加する等の目的で、例えば、午後の遅番の出勤者であるにもかかわらず、朝から住居を出る等、所定の就業開始時刻とかけ離れた時刻に会社に行く場合には、当該行為は、むしろ当該業務以外の目的のために行われるものと考えられるので、就業との関連性はないと認められる。

通勤の定義にある、「就業に関し」とは、通勤と認められるには、【移動行為が業務と密接な関連】をもって行われることを必要とすることをいう。

概ね2時間以内の就業後のクラブ活動であれば、認められるが、所定の就業時間とかけ離れた時刻に出社する場合は、通勤とは認められない(平成18.3.31基発0331042号)

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【試験問題】通勤災害とは、労働者の通勤による負傷、疾病、障害又は死亡をいうが、次の説明は、この通勤に関する記述である。業務の終了後、事業場施設内で、サークル活動をした後に帰宅する場合は、社会通念上就業と帰宅との直接的関連を失わせると認められるほど長時間となるような場合を除いても、通勤に該当することはない。 【解答】×

社会通念上就業と帰宅との直接的関連を失わせると認められるほど長時間となるような場合を除き、就業との関連性を認めても差し支えないとされているため、通勤に該当することもありますが、

業務終了後、事業場施設内でサークル活動に2時間50分行った後の退社、本件においては、サークル活動に要した時間は、就業との関連性を失わせると認められるほどの長時間といえます。
(S49.9.26基収2023号)

そのため、回答は×です。(H18.3.31基発0331042号)

社会通念上就業と帰宅との直接的関連を失わせると認められるほどの長時間とは、概ね2時間を超えるか超えないかで判断します。

【試験問題】次の説明は、通勤災害及び業務災害の範囲に関する記述である。転任等のやむを得ない事情のために同居していた配偶者と別居して単身で生活する者や家庭生活の維持という観点から自宅を本人の生活の本拠地とみなし得る合理的な理由のある独身者にとっての家族の住む家屋については、当該家屋と就業の場所との間を往復する行為に反復・継続性が認められるときは住居と認めて差し支えないが、「反復・継続性」とは、おおむね2か月に1回以上の往復行為又は移動がある場合に認められる。 【解答】×

反復・継続性=おおむね毎月1回以上の往復行為又は移動

39号通達において「当該往復行為に反復・継続性が認められる」ことが要件とされているが、

具体的には、「おおむね毎月1回以上の往復行為がある場合には、この要件を満たすものとして取り扱うこと。」との事務連絡があります。

事務連絡第6号「単身赴任者等の通勤災害の取り扱いにつて」労働省労働基準局補償課長(平成7年2月1日)第3条1項

従来の通勤災害認定基準は、平成18年に改められました。

(1)赴任先住居から帰省先住居への移動については、勤務日当日又はその翌日に行なわれたものは原則として通勤とみなす

(2)帰省先住居から赴任先住居への移動については、勤務日当日又はその前日に行なわれたものは原則として通勤とみなす。

これにより、会社から一旦赴任先の住居へ戻り、その翌日に家族の住む帰省先住居へ移動する途上の事故も、その住居間移動がある程度反復継続性を有しているものである限り、通勤災害として認められるようになりました。

(平成18年4月施行の労災保険法改正)


【試験問題】通勤災害とは、労働者の通勤による負傷、疾病、障害又は死亡をいうが、次の説明は、この通勤に関する記述である。昼休みに自宅まで時間的に十分余裕をもって往復できる労働者が、午前中の業務を終了して帰り、午後の業務に就くために出勤する往復行為は、通勤に該当しない。【解答】×

就業との関連性が認められるので、通勤に該当しますので、回答はXです。
また通勤は1日について1回のみしか認められないものではないので誤りです。
(H18.3.31基発0331042号)


【試験問題】次の説明は、労働者災害補償保険法に関する記述である。通勤としての移動の経路を逸脱し、又は移動を中断した場合でも、その逸脱又は中断が、日常生活上必要な行為であって厚生労働省令で定めるものをやむをえない事由により行うための最小限度のものであるときは、その逸脱又は中断の間を除き、その後の移動は、通勤に該当する。 【解答】○

通勤の途中において、労働者が逸脱、中断をした場合には、原則として、その後は一切通勤とは認められませんが、これについては、通勤の実態を考慮して法律で例外が設けられ、通勤途中で日用品の購入その他日常生活上必要な行為をやむを得ない事由により最少限度の範囲で行う場合には、当該逸脱又は中断の間を除き、合理的な経路に復した後は通勤と認められることとされています。(法7条3項、昭和48年11月22日基発第644号)

「日用品購入その他これに準ずる日常生活上必要な行為」の具体例

・帰途で惣菜等を購入する
・独身労働者が食堂に食事に立ち寄る
・クリーニング店に立ち寄る
・通勤の途次に病院、診療所で治療を受ける
・選挙の投票に寄る場合等がこれに該当する。

「やむを得ない事由により行なうため」とは、日常生活の必要から通勤の途中で行なう必要のあることをいい、「最少限度のもの」とは、当該逸脱又は中断の原因となつた行為の目的達成のために必要とする最少限度の時間、距離等をいう(昭和48年11月22日基発第644号)


【試験問題】次の説明は、通勤災害の保険給付に関する記述である。政府は、療養給付を受ける労働者(法令で定める者を除く。)から、200円(健康保険法に規定する日雇特例被保険者である労働者については100円)を一部負担金として徴収する。ただし、現に療養に要した費用の総額がこの額に満たない場合は、現に療養に要した費用の総額に相当する額を徴収する。【解答】○

一部負担金の額は、200円(健康保険法に規定する日雇特例被保険者である労働者については、100円)とする。ただし、現に療養に要した費用の総額がこの額に満たない場合には、当該現に療養に要した費用の総額に相当する額とする。(則44条の2)

一部負担金は休業給付から控除します。

以下の者からは一部負担金を徴収しません。

(1)第三者行為災害により療養給付を受ける者
(2)療養開始後3日以内に死亡した者
(3)休業給付を受けない者
(4)同一の通勤災害による療養給付に対して、すでに一部負担金を納付した者
(5)特別加入者

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