労基法 第十五条  (労働条件の明示)

第十五条  (労働条件の明示)
使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない。
2  前項の規定によつて明示された労働条件事実と相違する場合においては、労働者は、即時に労働契約を解除することができる。
3  前項の場合、就業のために住居を変更した労働者が、契約解除の日から十四日以内に帰郷する場合においては、使用者は、必要な旅費を負担しなければならない。

労働条件の明示について、条件相違の場合即解除できるという事が書いてあり、最後3項で、その場合14日以内の帰郷は一切の旅費を負担とも書いてあります。

さて労働基準法第15条(労働条件の明示)で肝となる「絶対的明示事項」ですが、問題を解く以前に知識として「労働基準法施行規則第5条」で定められている「絶対的明示事項:労働契約締結時に明示しなければならない労働条件」を知っている事が前提ですので覚えますというか暗記レベルで頭に叩き込みます。

◎労働契約締結時に明示しなければならない労働条件(労働基準法施行規則第5条)

1.〜7.は必ず明示「絶対的明示事項」(青字は労働基準法89条に定める「絶対的必要記載事項」
1.〜6.については必ず書面の交付(7.昇給は絶対的明示事項ですが、文書の交付によって明示するは必要はありません。)
8.〜15.は制度を設ける場合には必ず明示「相対的明示事項」

1. 労働契約の期間に関する事項
2. 期間の定めのある労働契約を更新する場合の基準に関する事項(H25改正追加)
3. 就業の場所、従事する業務の内容
4. 始業・終業の時刻、所定労働時間を超える労働(早出、残業など)の有無、休憩時間、休日、休暇および交替制勤務をさせる場合は就業時転換に関する事項
5. 賃金の決定、計算・支払いの方法および賃金の締切り・支払いの時期に関する事項
6. 退職に関する事項(解雇の事由を含む)
7. 昇給に関する事項

8. 退職手当の定めが適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算・支払いの方法および支払いの時期に関する事項
9. 臨時に支払われる賃金、賞与などに関する事項
10. 労働者に負担させる食費、作業用品その他に関する事項
11. 安全・衛生に関する事項
12. 職業訓練に関する事項
13. 災害補償、業務外の傷病扶助に関する事項
14. 表彰、制裁に関する事項
15. 休職に関する事項

労働条件の絶対的明示事項の中で、「労働条件の絶対的明示事項」にはあるものの、「就業規則の絶対的必要記載事項」には「1.労働契約の期間に関する事項」「2.期間の定めのある労働契約を更新する場合の基準に関する事項」「3.就業の場所及び従事すべき業務に関する事項」 「4.の内、所定労働時間を超える労働の有無」含まれていません。

ここは試験的には出題頻度が特に高いのですが、特に「労働条件の絶対的明示事項」と「就業規則の絶対的必要記載事項」の差も確実に覚えることが必須のポイントです。

それこそ語呂合わせなんかで覚える事が推奨されてますが、こんなこといちいち語呂合わせ作ってったらきりがありません。

なので個人的には1.2.期間や3.場所、4.残業など将来的な事項であり不確定要素も強いため書面化になじまない事項は就業規則の「絶対的必要記載事項」に無いってイメージから入る覚え方でいいのかなと思います。

で、纏めると「絶対的明示事項」は下記で、


・期間 ・更新基準・場所 ・業務
始業終業時刻
・所定労働時間を越える労働の有無
休憩時間 ・休日 ・休暇
交代勤務の転換
賃金(退職金、賞与を除く)
・計算/支払方法/支払時期
・退職に関する事項(解雇の事由を含む)
——————–ここまで書面で
・昇給(書面でなく口頭でも可)


「相対的明示事項」は下記です。(口頭明示でも可)
・退職手当、賞与 計算/支払方法/支払時期
・食費 ・作業用品
・安全/衛生 ・職業訓練
・災害補償
・表彰制裁
・休職

で関連する法令で参考に「パートタイム労働法」
特定事項)は文書交付等により明示義務(10万円以下の過料)


・昇給の有無、退職手当の有無、賞与の有無
・文書交付以外以外の方法 ファクシミリ、電子メール


【試験問題】
次の説明は、労働基準法の労働時間に関する記述である。「所定労働時間を超える労働の有無」は、労働基準法第15条第1項の規定により使用者が労働契約の締結に際して労働者に対して明示しなければならない労働条件の一つとされており、また、労働基準法第89条において、就業規則のいわゆる絶対的必要記載事項ともされている。
【解答】
×

「絶対的明示事項」と「絶対的必要記載事項」の差を覚えていれば解けるし、覚えていないと解けない設問です。だからこそここは確実に覚える必要があります。


【試験問題】
次の説明は、労働契約に関する記述である。労働契約の締結に際し、使用者は労働者に対して賃金、労働時間等の労働条件を明示する必要があるが、その際、就業場所や労働時間に関する事項はもとより、退職手当や賞与に関する事項も書面で明示する必要がある。
【解答】
×

退職手当・賞与については、相対的明示事項(定めがある場合には明示しなければならない)です。

で、相対的明示事項は、書面による明示事項から除かれています。

退職に関する事項…絶対的明示事項
退職手当に関する事項…相対的明示事項

比較:パートタイム労働法六条

「事業主は、短時間労働者を雇い入れた時は、速やかに、「特定事項」を文書の交付等により明示しなければならない。」

特定事項とは、①昇格の有無退職手当の有無賞与の有無


【試験問題】
休職に関する事項は、使用者がこれに関する定めをする場合には、労働基準法第15条第1項及び同法施行規則第5条第1項の規定により、労働契約の締結に際し労働者に対して明示しなければならない労働条件とされており、また、それが当該事業場の労働者のすべてに適用される定めであれば、同法第89条に規定する就業規則の必要記載事項でもある。
【解答】


【試験問題】
使用者は、「表彰に関する事項」については、それに関する定めをする場合であっても、労働契約の締結に際し、労働者に対して、労働基準法第15条の規定に基づく明示をする必要はない。
【解答】
×

表彰は相対的明示事項ですので、「定めをする場合」は、明示が必要です


【試験問題】
次の説明は、労働基準法に定める労働契約等に関する記述である。労働契約の締結に際し、労働者に対して書面の交付により明示しなければならないこととされている賃金(退職手当及び一定の賃金を除く。)の決定及び計算に関する事項に係る書面の内容としては、当該事業場の就業規則を労働者に周知させる措置が講じられていれば、就業規則の規定と併せ当該事項が当該労働者について確定し得るものであればよく、例えば、当該労働者の採用時に交付される辞令であって当該就業規則に規定されている賃金等級が表示されたものでも差し支えないとされている。
【解答】

交付する書面の内容は、設問のように労働者の採用時に交付される辞令であって当該就業規則に規定されている賃金等級が表示されたものでも差し支えありません。

就業規則等を労働者に周知させる措置が講じられている事業場では、労働契約締結時の賃金に関する事項の交付書面の内容としては、就業規則等の規定と併せ賃金に関する事項が当該労働者について確定し得るものであれば問題ありません。

例としては、労働者の採用時に交付される辞令等に、就業規則等に規定されている賃金等級が表示されたものでも差し支えないとされています。

なお、労働契約に際し書面を交付しなければならないその他の労働条件に関しても、労働者に適用する部分を明確にした就業規則を交付する方法でも差し支えないとされています。


【試験問題】
次の説明は、労働基準法に定める労働契約に関する記述である。使用者は、「表彰に関する事項」については、それに関する定めをする場合であっても、労働契約の締結に際し、労働者に対して、労働基準法第15条の規定に基づく明示をする必要はない。
【解答】
×

「表彰に関する事項」については、相対的必要記載事項とされているので、定めがあれば明示が必要です。


【試験問題】
労働契約の締結に際し、労働者に対して書面の交付により明示しなければならないこととされている賃金(退職手当及び一定の賃金を除く。)の決定及び計算に関する事項に係る書面の内容としては、当該事業場の就業規則を労働者に周知させる措置が講じられていれば、就業規則の規定と併せ当該事項が当該労働者について確定し得るものであればよく、例えば、当該労働者の採用時に交付される辞令であって当該就業規則等に規定されている賃金等級が表示されたものでも差し支えないとされている。
【解答】

覚える事そのままの基本問題です。


【試験問題】
次の説明は、労働契約に関する記述である。賃金や労働時間に関する事項について、労働契約締結時に書面により明示する必要があるが、その際、労働者に適用される部分を明確にして就業規則を労働契約の締結の際に交付することとしても差し支えない。
【解答】

通達「書面の様式は自由です。

なお、「明示すべき事項については、当該労働者に適用する部分を明確にして就業規則を労働契約の締結の際に交付することとしても差し支えない」(平成11.1.29基発45)


【試験問題】
次の説明は、労働基準法に定める労働契約に関する記述である。労働契約の期間に関する事項、就業の場所及び従事すべき業務に関する事項は、使用者が、労働契約の締結に際し、労働者に対して書面の交付によって明示しなければならない事項に含まれている。
【解答】


【試験問題】
次の説明は、労働基準法の労働契約等に関する記述である。労働契約の締結に際し書面を交付して明示すべき労働条件のうち、退職に関する事項については、退職の事由及び手続、解雇の事由等を明示しなければならないが、明示事項の内容が膨大なものとなる場合は、労働者の利便性をも考慮し、適用される就業規則の関係条項名を網羅的に示すことで足りる。
【解答】

労働移動の増大、就業形態の多様化等に伴う措置。(平11.1.29 基発45号)退職の事由及び手続、解雇の事由等については、絶対的明示事項で書面の交付による明示にしなければならない。明示する際、書面の様式は特に定められておらず、これを明確にした就業規則の交付でもかまいません。


【試験問題】
労働基準法第15条は、使用者が労働契約の締結に際し労働者に明示した労働条件が実際の労働条件と相違することを、同法第120条に定める罰則付きで禁止している。
【解答】×


労基法第15条に違反して労働条件を明示しなかった場合には、罰則が適用されますが(第120条第1号)明示した労働条件が実際の労働条件と異なる場合には、罰則は適用されないことに注意です。

この場合はペナルティーは労働契約の即時解除及び帰郷旅費の問題(第15条第3項及び第3項)になります。


【試験問題】
労働基準法第15条第1項の規定によって明示された労働条件が事実と相違する場合、労働者は、即時に労働契約を解除することができる。
【解答】○

条文そのままです。個人的にはこの罰則の有無の設問は何を禁じているかという法令の本旨と違うように思うのですが、学習のポイントと言えばポイントなので覚えます。


【試験問題】
明示された労働条件と異なるために労働契約を解除し帰郷する労働者について、労働基準法第15条第3項に基づいて使用者が負担しなければならない旅費は労働者本人の分であって、家族の分は含まれない。
【解答】
×

明示された労働条件が事実と相違する場合の帰郷旅費「使用者は、必要な旅費を負担しなければなりません。」の問題で、ここは就業のため移転した家族の旅費も含まれると解されています。(S23.9.13発基第17号)

具体的に書いてませんが、法令の趣旨を考えると当然家族分の費用も必要です。


【試験問題】
労働契約の締結に際し明示された労働条件が事実と相違しているため、労働者が労働契約を解除した場合、当該解除により労働契約の効力は遡及的に消滅し、契約が締結されなかったのと同一の法律効果が生じる。
【解答】
×

「解除」に関する定義(民法630条)の問題なので、超難問というか、間違ってもいい問題です。ほかの選択肢から、鉄板正解を見つければいいのかなと思います。

ここの「解除」は、契約の効果を遡及的に消滅させる解除(民法第545条)の事ではなく、契約を将来に向かって消滅させる解約(民法第630条)の事で、「雇用契約の解除は、将来に向かってのみ効力を生じる」旨を規定しています。


【試験問題】
労働基準法第15条では、使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならず、そのうち一定の事項については書面の交付により明示しなければならないとされているが、健康保険、厚生年金保険、労働者災害補償保険及び雇用保険の適用に関する事項もこの書面により明示しなければならない事項に含まれている。【解答】×

「健康保険、厚生年金保険、労働者災害補償保険及び雇用保険の適用に関する事項」は、労働契約締結の際に書面により明示しなければならない労働条件に係る事項ではありません。


【試験問題】
派遣労働者に対する労働条件の明示は、労働者派遣法における労働基準法の適用に関する特例により派遣先の事業のみを派遣中の労働者を使用する事業とみなして適用することとされている労働時間、休憩、休日等については、派遣先の使用者がその義務を負う。
【解答】
×

労働条件の明示は労働契約を締結する際の使用者の義務で、派遣労働者と労働契約を締結する使用者は派遣先ではなく派遣元の使用者なので派遣元の使用者が、(労働者派遣法における労働基準法の適用に関する特例により自己が労基法に基づく義務を負わない労働時間、休憩、休日等を含めて)すべての明示義務を負います。


【試験問題】
労働基準法第15条に基づいて明示すべき労働条件の範囲は、同法第1条「労働条件の原則」及び第2条「労働条件の決定」でいう労働条件の範囲とは異なる。
【解答】

第1条及び第2条の労働条件は、労働者の職場における一切の待遇で、第15条の労働条件は、施行規則第5条に規定されている労働条件で、第15条の方が狭いことになります。


【試験問題】
使用者は、労働基準法第15条(労働条件の明示)の規定に基づき、労働契約の締結に際し、労働者に対して、「所定労働時間を超える労働の有無」及び「所定労働日以外の日の労働の有無」について、書面の交付により明示しなければならないこととされている。
【解答】
×

「所定労働日以外の日の労働の有無」(休日労働の有無)については、第15条に基づく労働条件の明示事項に含まれていません。

そのため、休日労働の有無は、書面の交付による明示も必要ありません。


【試験問題】
労働基準法第15条においては、使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については書面の交付により明示しなければならないこととされているが、労働時間については、始業及び終業の時刻、休憩時間、休日等のほか、残業(所定労働時間を超える労働)の有無についても、書面の交付により明示しなければならないこととされている。
【解答】

覚えた事そのままで、正しいです。ほんとうに手を替え品を替えよく聞かれます。


【試験問題】
使用者は、期間の定めのある労働契約であって当該労働契約の期間の満了後に当該労働契約を更新する場合があるものの締結の際に、労働者に対して、期間の定めのある労働契約を更新する場合の基準に関する事項を、書面の交付により明示しなければならない。
【解答】

覚えた事そのままで、正しいです。本当に文面を変えていろいろ聞かれます。


【試験問題】
労働契約の期間に関する事項、就業の場所及び従事すべき業務に関する事項は、使用者が、労働契約の締結に際し、労働者に対して書面の交付によって明示しなければならない事項に含まれている。
【解答】

覚えた事そのままで、正しいです。これでもか、これでもか、と聞かれます。


【試験問題】
労働契約の締結に際し労働者に対して書面の交付により明示しなければならないこととされている労働条件の多くは就業規則のいわゆる絶対的必要記載事項とも一致しているが、労働契約の締結に際し労働者に対し書面により明示しなければならないこととされている「就業の場所に関する事項」は、就業規則の絶対的必要記載事項とはされていない。
【解答】

覚えた事そのままで、正しいです。

サスガにこれだけ聞かれると、覚えなきゃいけないんだろうなと覚悟が出来ます。

関連条文

  1. 障害者雇用促進法 第一条(目的)

  2. 介護保険法 第百十五条の三十二 (業務管理体制の整備等)

  3. 船員法 第百四十二条 (時効)

  4. 労基法 第十二条(定義)

  5. 労働組合法14

  6. 労基法 第十一条(定義)

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