厚生年金保険法
第一章 総則
第一条(この法律の目的)
この法律は、労働者の老齢、障害又は死亡について保険給付を行い、労働者及びその遺族の生活の安定と福祉の向上に寄与することを目的とし、あわせて厚生年金基金がその加入員に対して行う給付に関して必要な事項を定めるものとする。
労働者とその遺族の所得補償をするために国民年金の基礎年金に上乗せをする年金を支給する事を主な目的にしています。
第二条 (管掌)
厚生年金保険は、政府が、管掌する。
意思(望む望まない)に関わらず強制的に(無理やり?)保険料を徴収して、保険事故があれば長期的に年金を支給するため、政府が管掌します。
また厚生年金の保険事業で、老齢に関する給付の一部を代行する厚生年金基金があるものの、健康保険組合のような保険者ではありません。(106条)
第二条の二 (年金額の改定)
この法律による年金たる保険給付の額は、国民の生活水準、賃金その他の諸事情に著しい変動が生じた場合には、変動後の諸事情に応ずるため、速やかに改定の措置が講ぜられなければならない。
賃金スライド(1人当たりの賃金の変動に応じて改定)と物価スライド(物価の変動に応じて改定)という二つの仕組みで毎年改定されることになっています。
勉強のポイントとしては、厚生年金保険法では賃金(標準報酬)が反映されるので、賃金の著しい変動が考慮されますが、国民年金法(国年法第4条)では賃金は明示されていません。
第二条の三 (財政の均衡)
厚生年金保険事業の財政は、長期的にその均衡が保たれたものでなければならず、著しくその均衡を失すると見込まれる場合には、速やかに所要の措置が講ぜられなければならない。
少子高齢化が進行して、年金制度について不安が広がったので、本条が設けられたとは思うのですが、なかなか難しいテーマかとは思います。
第二条の四(財政の現況及び見通しの作成)
政府は、少なくとも五年ごとに、保険料及び国庫負担の額並びにこの法律による保険給付に要する費用の額その他の厚生年金保険事業の財政に係る収支についてその現況及び財政均衡期間における見通し(以下「財政の現況及び見通し」という。)を作成しなければならない。
国民年金と同様に年金財政の収支を均衡させるために、従来の財政計算の方法である永久均衡方式を見直して、約100年間で財政を均衡させる有限均衡方式を採用しました。
2 前項の財政均衡期間(第三十四条第一項において「財政均衡期間」という。)は、財政の現況及び見通しが作成される年以降おおむね百年間とする。
平成16年改正で、少子高齢化が進んでる事や、年金受給世代の平均寿命の延びを反映して給付の伸びを抑制するマクロ経済スライドの仕組みが導入された際、同時に給付水準の下限も設定され、この下限を上回るような給付水準を維持する事としています。
具体的には給付水準の下限は「40年間平均賃金の旦那さんと、専業主婦の奥さん」のモデル世帯の手取り賃金の50/100を上回る設定
3 政府は、第一項の規定により財政の現況及び見通しを作成したときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。
第三条 (用語の定義)
この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
一 保険料納付済期間 国民年金法(昭和三十四年法律第百四十一号)第五条第二項に規定する保険料納付済期間をいう。
二 保険料免除期間 国民年金法第五条第三項に規定する保険料免除期間をいう。
三 報酬 賃金、給料、俸給、手当、賞与その他いかなる名称であるかを問わず、労働者が、労働の対償として受けるすべてのものをいう。ただし、臨時に受けるもの及び三月を超える期間ごとに受けるものは、この限りでない。
四 賞与 賃金、給料、俸給、手当、賞与その他いかなる名称であるかを問わず、労働者が労働の対償として受けるすべてのもののうち、三月を超える期間ごとに受けるものをいう。
2 この法律において、「配偶者」、「夫」及び「妻」には、婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含むものとする。
その他の用語の定義としては
第1種被保険者 男子である厚保法による被保険者であって、第3種被保険者、第4種 被保険者及び船員任意継続被保険者以外のものをいう。
(昭和60年附則第5条第10号)
第2種被保険者 女子である厚保法よる被保険者であって、第3種被保険者、第4種被保険者及び船員任意継続被保険者以外のものをいう。
(昭和60年附則第5条第11号)
第3種被保険者 鉱業法第4条に規定する事業の事業場に使用されかつ、常時坑内作業に従事する厚保法による被保険者又は船員法第1条に規定され船員として船舶に使用される同法による被保険者であって、第4種被保険者及び船員任意継続被保険者以外のものをいう。
第4種被保険者
船員任意継続被保険者
の定義
厚保法では用語の意義は以下の通りです。国民年金保険法とそんなに変わってないよって言ってます
【試験問題】次の説明は、厚生年金保険法に関する記述である。保険料納付要件に関し、厚生年金保険の被保険者期間は、国民年金における保険料納付済期間とされ、また、国民年金における保険料免除期間は厚生年金保険の被保険者期間中には存在しえない。 【解答】○
この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
1号 保険料納付済期間 国民年金法(昭和三十四年法律第百四十一号)第五条第二項に規定する保険料納付済期間をいう。 (厚生年金保険法 3条1項1号)
20歳前および60歳以後の期間は合算対象期間で×にしてしまいましたが、問題文の「保険料納付要件」は障害基礎年金の用語で、障害基礎年金については20歳前および60歳以後の期間についても保険料納付済期間とされるため(遺族基礎年金についても同じ)○なんだと思います。
※厚生年金の基礎年金拠出金の拠出対象期間は20歳以上60歳未満であるから○?とも考えられますが。
国民年金法では、保険料納付済期間は第1号被保険者としての被保険者期間のうち納付された保険料に係るもの、第2号被保険者としての被保険者期間及び第3号被保険者としての被保険者期間を合算した期間と定義されてます。
保険料免除の規定が適用されるのは、第1号被保険者のみであり、厚生年金保険の被保険者期間(第2号被保険者)に保険料免除期間は存在しません。
厚年法3条、国年法5条
「国民年金における保険料免除期間は、厚生年金保険の被保険者期間中には存在しえない。」との問いには、存在すると反論できる。「育児休業期間中の保険料免除」規定があり、育児休業等を開始した日の属する月から育児休業等が終了する日の翌日の属する月の前月まで」免除されるとの規定であり、厚生年金保険に免除規定は存在しえないとの問いには、上記例からも「×」との回答になると思う。
[自説の根拠]厚生年金保険法第81条の2
育児休業期間中の保険料免除期間はあくまでも
「厚生年金の」保険料免除期間です。
この問題が「厚生年金の保険料免除期間はありえるか」
でしたら〇だと思いますが、
問題は「国民年金における免除期間か」と聞いています。
そして国年の保険料免除期間とは、全免除、3/4、半額、4/1免除のみと書かれているので(法5条3項)
2号、3号の期間中、国年の免除期間はありえないとの
判断でよいと思います。
厚生年金の保険料免除?
そうか!
産前産後休業期間中、育児休業等期間中があった。
いずれも事業主が実施機関に申出。
開始した日の属する月から、終了する日の翌日の属する月の前日までだったな。
次の説明は、厚生年金保険法に関する記述である。
65歳以上の者であって、厚生年金保険の被保険者期間が1年未満の者は、国民年金法に規定する保険料納付済期間と保険料免除期間とを合算した期間が25年以上あるときであっても、老齢厚生年金を請求することはできない。
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