第四章 厚生年金保険事業の円滑な実施を図るための措置
第七十九条 政府は、厚生年金保険事業の円滑な実施を図るため、厚生年金保険に関し、次に掲げる事業を行うことができる。
– 一 教育及び広報を行うこと。
– 二 被保険者、受給権者その他の関係者(以下この条において「被保険者等」という。)に対し、相談その他の援助を行うこと。
– 三 被保険者等に対し、被保険者等が行う手続に関する情報その他の被保険者等の利便の向上に資する情報を提供すること。
– 2 政府は、厚生年金保険事業の実施に必要な事務(国民年金法第九十四条の二第一項の規定による基礎年金拠出金(以下「基礎年金拠出金」という。)の負担に伴う事務を含む。)を円滑に処理し、被保険者等の利便の向上に資するため、電子情報処理組織の運用を行うものとする。
– 3 政府は、第一項各号に掲げる事業及び前項に規定する運用の全部又は一部を日本年金機構(以下「機構」という。)に行わせることができる。
– 4 政府は、独立行政法人福祉医療機構法(平成十四年法律第百六十六号)第十二条第一項第十二号に規定する小口の資金の貸付けを、独立行政法人福祉医療機構に行わせるものとする。
第四章の二 積立金の運用
(運用の目的)
第七十九条の二 年金特別会計の厚生年金勘定の積立金(以下この章において「積立金」という。)の運用は、積立金が厚生年金保険の被保険者から徴収された保険料の一部であり、かつ、将来の保険給付の貴重な財源となるものであることに特に留意し、専ら厚生年金保険の被保険者の利益のために、長期的な観点から、安全かつ効率的に行うことにより、将来にわたつて、厚生年金保険事業の運営の安定に資することを目的として行うものとする。
(積立金の運用)
第七十九条の三 積立金の運用は、厚生労働大臣が、前条の目的に沿つた運用に基づく納付金の納付を目的として、年金積立金管理運用独立行政法人に対し、積立金を寄託することにより行うものとする。
– 2 厚生労働大臣は、前項の規定にかかわらず、同項の規定に基づく寄託をするまでの間、財政融資資金に積立金を預託することができる。
(運用職員の責務)
第七十九条の四 積立金の運用に係る行政事務に従事する厚生労働省の職員(政令で定める者に限る。以下「運用職員」という。)は、積立金の運用の目的に沿つて、慎重かつ細心の注意を払い、全力を挙げてその職務を遂行しなければならない。
(秘密保持義務)
第七十九条の五 運用職員は、その職務に関して知り得た秘密を漏らし、又は盗用してはならない。
(懲戒処分)
第七十九条の六 運用職員が前条の規定に違反したと認めるときは、厚生労働大臣は、その職員に対し国家公務員法(昭和二十二年法律第百二十号)に基づく懲戒処分をしなければならない。
(年金積立金管理運用独立行政法人法との関係)
– 第七十九条の七 積立金の運用については、この法律に定めるもののほか、年金積立金管理運用独立行政法人法(平成十六年法律第百五号)の定めるところによる。
第五章 費用の負担
(国庫負担)
第八十条 国庫は、毎年度、厚生年金保険の管掌者たる政府が負担する基礎年金拠出金の額の二分の一に相当する額を負担する。
– 2 国庫は、前項に規定する費用のほか、毎年度、予算の範囲内で、厚生年金保険事業の事務(基礎年金拠出金の負担に関する事務を含む。)の執行に要する費用を負担する。
80
11 80
次の説明は、標準報酬又は費用負担に関する記述である。
昭和36年4月1日前の第3種被保険者期間に係る給付費については、25%を国庫が負担する。 2009年度(平成21年度) 試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年01月30日)
解答
[正しい答え]
○
国庫は、毎年度、基礎年金拠出金の額の2分の1に相当する額を負担することになっていますが、昭和36年4月1日前の期間に係る給付費については、「一般の被保険者期間については給付費の100分の20」「第3種被保険者期間に係るものについては100分の25」を国庫負担する等の経過措置があります。
[自説の根拠]法80条、法附則32条、法附則79条1号
厚生年金保険の給付費に対する国庫負担は、昭和60年改正において原則として基礎年金の3分の1(現行は2分の1)に相当する部分に集中されたため、その他の部分に関しては原則として行われないこととなった。
しかし、昭和36年4月1日前の期間に係る給付費については、従前どおり一般の被保険者については給付費の100分の20、第三種被保険者期間に係るものについては100分の25、旧適用法人共済組合期間については100分の15.85を国庫負担する等の経過措置が設けられている。
[自説の根拠]法附則79条(昭和60年5月1日法律第34号)
㋑基礎年金拠出金の【2分の1】
㋺昭和36年4月前の被保険者期間に係る給付費の
【100分の20】
㋩㋺の期間のうち第3種被保険者期間に係る給付費の
【100分の25】
[自説の根拠]法80条1項、法附則(60)79条
(保険料)
第八十一条 政府は、厚生年金保険事業に要する費用(基礎年金拠出金を含む。)に充てるため、保険料を徴収する。
– 2 保険料は、被保険者期間の計算の基礎となる各月につき、徴収するものとする。
– 3 保険料額は、標準報酬月額及び標準賞与額にそれぞれ保険料率を乗じて得た額とする。
– 4 保険料率は、次の表の上欄に掲げる月分の保険料について、それぞれ同表の下欄に定める率(厚生年金基金の加入員である被保険者にあつては、当該率から第八十一条の三第一項に規定する免除保険料率を控除して得た率)とする。
平成十六年十月から平成十七年八月までの月分
千分の百三十九・三四
平成十七年九月から平成十八年八月までの月分
千分の百四十二・八八
平成十八年九月から平成十九年八月までの月分
千分の百四十六・四二
平成十九年九月から平成二十年八月までの月分
千分の百四十九・九六
平成二十年九月から平成二十一年八月までの月分
千分の百五十三・五〇
平成二十一年九月から平成二十二年八月までの月分
千分の百五十七・〇四
平成二十二年九月から平成二十三年八月までの月分
千分の百六十・五八
平成二十三年九月から平成二十四年八月までの月分
千分の百六十四・一二
平成二十四年九月から平成二十五年八月までの月分
千分の百六十七・六六
平成二十五年九月から平成二十六年八月までの月分
千分の百七十一・二〇
平成二十六年九月から平成二十七年八月までの月分
千分の百七十四・七四
平成二十七年九月から平成二十八年八月までの月分
千分の百七十八・二八
平成二十八年九月から平成二十九年八月までの月分
千分の百八十一・八二
平成二十九年九月以後の月分
千分の百八十三・〇〇
(育児休業期間中の保険料の徴収の特例)
第八十一条の二 育児休業等をしている被保険者が使用される事業所の事業主が、厚生労働省令の定めるところにより厚生労働大臣に申出をしたときは、前条第二項の規定にかかわらず、当該被保険者に係る保険料であつてその育児休業等を開始した日の属する月からその育児休業等が終了する日の翌日が属する月の前月までの期間に係るものの徴収は行わない。
(免除保険料率の決定等)
第八十一条の三 厚生労働大臣は、次項に規定する代行保険料率を基準として、政令の定めるところにより、厚生年金基金ごとに免除保険料率を決定する。
– 2 代行保険料率は、当該厚生年金基金の加入員の標準報酬月額の総額及び標準賞与額の総額にそれぞれ当該代行保険料率を乗じることにより算定した額(第百三十九条第七項又は第八項に規定する申出に係る加入員の標準報酬月額及び標準賞与額であつて同条第七項又は第八項に規定する期間に係るものにそれぞれ当該代行保険料率を乗じて得た額を控除した額とする。)の収入を代行給付費(当該厚生年金基金の加入員のすべてが加入員でないとして保険給付の額を計算した場合において増加することとなる保険給付に要する費用に相当する費用をいう。)に充てることとした場合において、当該代行給付費の予想額及び予定運用収入の額に照らし、将来にわたつて、財政の均衡を保つことができるものとして、政令の定めるところにより算定するものとする。
– 3 厚生年金基金は、厚生労働省令の定めるところにより、当該厚生年金基金に係る前項に規定する代行保険料率(次項において単に「代行保険料率」という。)を算定し、当該代行保険料率及びその算定の基礎となるものとして厚生労働省令で定める事項を厚生労働大臣に届け出なければならない。
– 4 厚生年金基金の設立の認可の申請を行う適用事業所の事業主は、厚生労働省令の定めるところにより、当該申請のときに当該設立される厚生年金基金に係る代行保険料率を算定し、当該代行保険料率及びその算定の基礎となるものとして厚生労働省令で定める事項を厚生労働大臣に届け出なければならない。
– 5 厚生労働大臣は、第一項の規定により免除保険料率を決定したときは、その旨を当該厚生年金基金に通知しなければならない。
– 6 厚生年金基金は、前項の通知を受けたときは、速やかに、これを当該厚生年金基金に係る適用事業所の事業主に通知しなければならない。
– 7 前項の適用事業所の事業主(当該厚生年金基金が設立された適用事業所の事業主に限る。)は、同項の通知を受けたときは、速やかに、これを当該通知に係る加入員に通知しなければならない。
81
次の説明は、厚生年金保険法の保険料の徴収に関する記述である。
事業主は、被保険者に対して通貨をもって報酬を支払う場合においては、被保険者の負担すべき前月の標準報酬月額に係る保険料(被保険者がその事業所または船舶に使用されなくなった場合においては、前月及びその月の標準報酬月額に係る保険料)を報酬から控除することができる。 2010年度(平成22年度) 試験問題 [改題] (最終改訂日: 2011年05月10日)
○
問題文の「被保険者がその事業所または船舶に使用されなくなった場合においては、前月及びその月の標準報酬月額に係る保険料」の部分において、月末に退職した場合は、前月とその月分の保険料を控除することができるが、問題では月末に退職したのか月中に退職したのかの記述がない。通常、保険料は被保険者の資格を取得した月から、その資格を喪失した月の前月までにつき、徴収すると規定されているので、月末退職の記述がない以上厳密な意味では「×」となる問題と思われます。
[自説の根拠]厚生年金保険法81条1項、2項。
(保険料の源泉控除)
第八十四条 事業主は、被保険者に対して通貨をもつて報酬を支払う場合においては、被保険者の負担すべき前月の標準報酬月額に係る保険料(被保険者がその事業所又は船舶に使用されなくなつた場合においては、前月及びその月の標準報酬月額に係る保険料)を報酬から控除することができる。
[自説の根拠]法84条1項
81
次の説明は、厚生年金保険法に関する記述である。
被保険者が使用される船舶が滅失し、沈没し、若しくは全く航海に堪えられなくなった場合には、翌月分以降の保険料の免除を申請することができる。 2006年度(平成18年度) 試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年05月11日)
×
保険料は、次の各号に掲げる場合においては、納期前であつても、すべて徴収することができる。
4号 被保険者の使用される船舶について船舶所有者の変更があつた場合、又は当該船舶が滅失し、沈没し、若しくは全く運航に堪えなくなるに至つた場合 (厚生年金保険法 85条1項4号)
保険料の繰上徴収(納期前の徴収)ができる規定に該当するので、免除の申請とは異なります。
翌月分以降の保険料の免除を申請することができるわけではない。
保険料の免除は、育児休業期間中の保険料の徴収の特例(法81条の2)しかないようです。
この場合、納期前であってもすべて徴収することができる。
育児休業期間中を除き、保険料の徴収の特例は設けられていない。
よって、被保険者が使用される船舶が滅失し、沈没し、若しくは全く航海に堪えられなくなった場合であっても保険料免除の申請をすることはできず、問題文は誤りとなる。
なお、被保険者の使用される船舶について船舶所有者の変更があった場合、又は当該船舶が滅失し、沈没し、若しくは全く運航に堪えなくなるに至った場合は、保険料の繰上徴収(納期前の徴収)ができる規定はある。(法85条4項)
[自説の根拠]法81条の2
参考 関連問題
保険料は、被保険者の使用される船舶について船舶所有者の変更があった場合、又は当該船舶が滅失し、沈没し、若しくは全く運航に堪えなくなるに至った場合は、納期前であっても、すべて徴収することができる。
正解は○
[自説の根拠]法85条4号
設問の場合は、「保険料の免除」ではなく「保険料の繰上徴収」の扱いになります。
81
4 81条
次の説明は、被保険者期間等に関する記述である。
昭和61年4月1日から平成3年3月31日まで第3種被保険者であった者の被保険者期間は、実期間を5分の6倍して計算される。 2003年度(平成15年度)
解答 ○
保険料は、被保険者期間の計算の基礎となる各月につき、徴収するものとする。 (厚生年金保険法 81条2項)
厚生年金 第3種被保険者期間の経過措置
①昭和61年4月1日以前 旧船員保険法 被保険者期間
→被保険者期間とみなす
②昭和61年4月1日以前
旧厚生年金保険法 第三種被保険者期間
①による厚生年金保険の被保険者期間
→実際の期間に3分の4を乗じた期間
③昭和61年4月1日~平成3年3月31日まで
第三種被保険者期間
→実際の期間に5分の6を乗じた期間
第三種被保険者の期間の計算についての経過措置
1)旧法期間(昭和61年3月31日以前・・「4月1日以前」は「誤り」)・・実際の期間を3分の4倍した期間。
2)新法期間(昭和61年4月1日より5年間、つまり平成3年3月31日までの期間)・・実際の期間を5分の6倍した期間。
★第三種被保険者であった期間(実際の期間)
昭和61年3月まで(旧法の期間)は3分の4倍
昭和61年4月から平成3年3月(新法になって5年間)は5分の6倍
★国年-老基の受給資格期間を見るときだけ適用
○受給資格期間
✕年金額の計算
✕保険料納付要件
★厚年-保険料納付要件を見るときだけ不適用
○受給資格期間
○年金額の計算
✕保険料納付要件
関連問題
次の説明は、標準報酬又は費用負担に関する記述である。
昭和36年4月1日前の第3種被保険者期間に係る給付費については、25%を国庫が負担する。
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