健保法 第百十条(家族療養費)

第四節 家族療養費、家族訪問看護療養費、家族移送費、家族埋葬料及び家族出産育児一時金の支給

(家族療養費)
第百十条  被保険者の被扶養者が保険医療機関等のうち自己の選定するものから療養を受けたときは、被保険者に対し、その療養に要した費用について、家族療養費を支給する。
2  家族療養費の額は、第一号に掲げる額(当該療養に食事療養が含まれるときは当該額及び第二号に掲げる額の合算額、当該療養に生活療養が含まれるときは当該額及び第三号に掲げる額の合算額)とする。
一  当該療養(食事療養及び生活療養を除く。)につき算定した費用の額(その額が現に当該療養に要した費用の額を超えるときは、当該現に療養に要した費用の額)に次のイからニまでに掲げる場合の区分に応じ、当該イからニまでに定める割合を乗じて得た額
イ 被扶養者が六歳に達する日以後の最初の三月三十一日の翌日以後であって七十歳に達する日の属する月以前である場合 百分の七十
ロ 被扶養者が六歳に達する日以後の最初の三月三十一日以前である場合 百分の八十
ハ 被扶養者(ニに規定する被扶養者を除く。)が七十歳に達する日の属する月の翌月以後である場合 百分の八十
ニ 第七十四条第一項第三号に掲げる場合に該当する被保険者その他政令で定める被保険者の被扶養者が七十歳に達する日の属する月の翌月以後である場合 百分の七十
二  当該食事療養につき算定した費用の額(その額が現に当該食事療養に要した費用の額を超えるときは、当該現に食事療養に要した費用の額)から食事療養標準負担額を控除した額
三  当該生活療養につき算定した費用の額(その額が現に当該生活療養に要した費用の額を超えるときは、当該現に生活療養に要した費用の額)から生活療養標準負担額を控除した額
3  前項第一号の療養についての費用の額の算定に関しては、保険医療機関等から療養(評価療養及び選定療養を除く。)を受ける場合にあっては第七十六条第二項の費用の額の算定、保険医療機関等から評価療養又は選定療養を受ける場合にあっては第八十六条第二項第一号の費用の額の算定、前項第二号の食事療養についての費用の額の算定に関しては、第八十五条第二項の費用の額の算定、前項第三号の生活療養についての費用の額の算定に関しては、第八十五条の二第二項の費用の額の算定の例による。
4  被扶養者が第六十三条第三項第一号又は第二号に掲げる病院若しくは診療所又は薬局から療養を受けたときは、保険者は、その被扶養者が当該病院若しくは診療所又は薬局に支払うべき療養に要した費用について、家族療養費として被保険者に対し支給すべき額の限度において、被保険者に代わり、当該病院若しくは診療所又は薬局に支払うことができる。
5  前項の規定による支払があったときは、被保険者に対し家族療養費の支給があったものとみなす。
6  被扶養者が第六十三条第三項第三号に掲げる病院若しくは診療所又は薬局から療養を受けた場合において、保険者がその被扶養者の支払うべき療養に要した費用のうち家族療養費として被保険者に支給すべき額に相当する額の支払を免除したときは、被保険者に対し家族療養費の支給があったものとみなす。
7  第六十三条、第六十四条、第七十条第一項、第七十二条第一項、第七十三条、第七十六条第三項から第六項まで、第七十八条、第八十四条第一項、第八十五条第八項、第八十七条及び第九十八条の規定は、家族療養費の支給及び被扶養者の療養について準用する。
8  第七十五条の規定は、第四項の場合において療養につき第三項の規定により算定した費用の額(その額が現に療養に要した費用の額を超えるときは、当該現に療養に要した費用の額)から当該療養に要した費用について家族療養費として支給される額に相当する額を控除した額の支払について準用する。

(家族療養費の額の特例)
第百十条の二  保険者は、第七十五条の二第一項に規定する被保険者の被扶養者に係る家族療養費の支給について、前条第二項第一号イからニまでに定める割合を、それぞれの割合を超え百分の百以下の範囲内において保険者が定めた割合とする措置を採ることができる。
2  前項に規定する被扶養者に係る前条第四項の規定の適用については、同項中「家族療養費として被保険者に対し支給すべき額」とあるのは、「当該療養につき算定した費用の額(その額が現に当該療養に要した費用の額を超えるときは、当該現に療養に要した費用の額)」とする。この場合において、保険者は、当該支払をした額から家族療養費として被保険者に対し支給すべき額を控除した額をその被扶養者に係る被保険者から直接に徴収することとし、その徴収を猶予することができる。

110

【試験問題】次の説明は、入院時食事療養費及び入院時生活療養費に関する記述である。被扶養者が保険医療機関に入院した場合の食事療養については、入院時食事療養費ではなく、家族療養費が支給される。 【解答】○

前項の規定による支払があったときは、被保険者に対し入院時食事療養費の支給があったものとみなす。 (健康保険法 85条6項)保険給付の種類として、医療給付で被扶養者に係わる給付は、「家族療養費」「家族訪問看護療養費」のみである。被保険者に関する保険給付は被保険者に対して家族療養費、家族訪問看護療養費、家族移送費、家族埋葬料及び家族出産育児一時金が支給されます。110条~114条

被保険者に対して保険給付される、「療養の給付」、「入院時食事療養費」、「入院時生活療養費」、「保険外併用療養費」、「療養費」の5種類の保険給付は、『被保険者』に対しては、【全て】【家族療養費】という名目で、「被保険者に対して」給付されます。
設問は、次のように追加するよより正確な内容になります。「被扶養者が保険医療機関に入院した場合の食事療養については、入院時食事療養費ではなく、家族療養費が、【被保険者に】支給される。
関連問題次の説明は、保険給付に関する記述である。被扶養者が保険医療機関において評価療養を受けた場合には、被保険者に対して家族療養費が支給される。

110

【試験問題】健康保険法に関する次の記述について、適切か否か答えよ。被扶養者が保険医療機関等において、評価療養又は選定療養を受けたときは、その療養に要した費用について、被保険者に対して家族療養費が支給される。【解答】○

被保険者の被扶養者が保険医療機関等のうち自己の選定するものから療養を受けたときは、被保険者に対し、その療養に要した費用について、家族療養費を支給する。
[自説の根拠]法110条1項、2項1号。

【試験問題】次の説明は、保険給付の受給権等に関する記述である。保険給付の受給権については、受給権者が死亡したとき、相続人が承継して受領することは禁止されている。 【解答】×

金銭債権であるため、相続の対象となり得るとされているため、相続人が受領することができます
健康保険法に未支給の保険給付という規定がないので、民法の規定で相続人が請求権を有することになる。
[自説の根拠]昭和2.2.26保理発719号
保険給付を受ける権利には、【療養の給付】を受ける権利は含まれません。

110

【試験問題】次の説明は、保険給付に関する記述である。
被扶養者が保険医療機関において評価療養を受けた場合には、被保険者に対して家族療養費が支給される。【解答】○

被保険者の被扶養者が保険医療機関等のうち自己の選定するものから療養を受けたときは、被保険者に対し、その療養に要した費用について、家族療養費を支給する。 (健康保険法 110条)
家族療養費は、療養の給付、入院時食事療養費、入院時生活療養費、保険外併用療養費および療養費に相当する給付。
保険外併用療養費は評価療養または選定療養を受けたときに支給される。
以上から被扶養者が選定療養を受けた場合は家族療養費が支給されることとなる。
評価療養:厚生労働大臣が定める「高度の医療技術」を用いた療養その他の療養
被保険者が、「評価療養」を受けた場合は、「保険外併用療養費」として支給されますが、設問の「被扶養者」に対しては、「療養の給付、入院時食事療養費、入院時生活療養費、療養費」が「家族療養費」として保険給付されます。
【評価療養】や【選定療養】が行われる場合、被保険者に対しては、【保険外併用療養費】として支給されますが、被扶養者には、【家族療養費】として支給されます。
被扶養者が、保険医療機関等のうち自己の選定するものから、評価療養又は選定療養を受けたときは、その療養に要した費用について、被保険者に対する保険外併用療養費に相当する給付が家族療養費として被保険者に支給される。
よって、問題文は正解となる。
なお、被保険者に対する療養の給付、入院時食事療養費、入院時生活療養費、保険外併用療養費、療養費に相当する給付を被扶養者が受けたときは被保険者に対して家族療養費が支給される。
[自説の根拠]法110条1項
家族療養費は、被保険者に対して支払われる。被扶養者に対してではないので注意
関連問題
次の説明は、健康保険法に関する記述である。
被扶養者が保険医療機関において療養を受けたときは、被扶養者に対して家族療養費が支給される。

9 110条
次の説明は、保険給付に関する記述である。
被扶養者が6歳に達する日以後の最初の3月31日の翌日以後であって70歳に達する日の属する月以前である場合、家族療養費の額は、当該療養(食事療養及び生活療養を除く。)につき算定した費用の額(その額が現に当該療養に要した費用の額を超えるときは、当該現に療養に要した費用の額)の100分の70である。 2009年度(平成21年度)
解答○
家族療養費の額は、第一号に掲げる額(当該療養に食事療養が含まれるときは当該額及び第二号に掲げる額の合算額、当該療養に生活療養が含まれるときは当該額及び第三号に掲げる額の合算額)とする。
1号 当該療養(食事療養及び生活療養を除く。)につき算定した費用の額(その額が現に当該療養に要した費用の額を超えるときは、当該現に療養に要した費用の額)に次のイからニまでに掲げる場合の区分に応じ、当該イからニまでに定める割合を乗じて得た額 (健康保険法 110条2項1号)

設問から除外されている、①「6歳年度末以前の被扶養者」の給付割合は、【100分の80】、②70歳以上の被扶養者(現役並み所得ある者は除く)は、特例で【100分の90】となっています。

被扶養者が70歳に達する日の属する月の翌月以後である場合で被保険者の所得が一定以上のときは100分の70

75歳以上になると後期高齢者医療制度で医療を受ける

(平成26年法改正)
70歳になる日の翌月以後の診療分から100分の80。
ただし、平成26年4月1日前に70歳(昭和19年4月1日以前生まれ)になった被保険者は100分の10のまま。

7 110条
次の説明は、健康保険法に関する記述である。
被扶養者が保険医療機関において療養を受けたときは、被扶養者に対して家族療養費が支給される。 1999年度(平成11年度)

解答×

被保険者の被扶養者が保険医療機関等のうち自己の選定するものから療養を受けたときは、被保険者に対し、その療養に要した費用について、家族療養費を支給する。 (健康保険法 110条)
被保険者の【療養の給付】【入院時食事療養費】【入院時生活療養費】【保険外併用療養費】【療養費】に対応する保険給付が、「被扶養者」に対して実施された場合は、「被保険者」に対して、【家族療養費】が支給されます。

参考
傷病給付 本人給付⇒家族給付
療養の給付・療養費⇒家族療養費
入院時食事療養費⇒家族療養費
入院時生活療養費⇒家族療養費
保険外併用療養費⇒家族療養費
訪問看護療養費⇒家族訪問看護療養費
移送費⇒家族移送費
傷病手当金⇒ない
高額療養費⇒高額療養費
高額介護合算療養費⇒高額介護合算療養費
出産給付 本人給付⇒家族給付
出産育児一時金・出産手当金⇒家族出産育児一時金
死亡給付 本人給付⇒家族給付
埋葬料(費)⇒家族埋葬料

健康保険の給付は、全て「被保険者」が受け取ります。
受け取れない時(=死亡した時)のみ、例外として(というか、当然のこととして)、別の人が受け取ります。
それが、見支給の保険給付や葬祭料等になります

関連問題
次の説明は、保険給付に関する記述である。
被扶養者が保険医療機関において評価療養を受けた場合には、被保険者に対して家族療養費が支給される。

4 110条
次の説明は、保険給付に関する記述である。
海外にいる被保険者及び被扶養者が海外の医療機関で療養等を受け、事業主を経由して療養費の支給申請があった場合、保険者からの療養費の支給は送料を差し引いた金額が被保険者に送金される。 2001年度(平成13年度)

解答 ×
被保険者の被扶養者が保険医療機関等のうち自己の選定するものから療養を受けたときは、被保険者に対し、その療養に要した費用について、家族療養費を支給する。 (健康保険法 110条)

療養費は事業主が代理して受領し、保険者からの外国への送金は行われない。

設問のように現に海外にある被保険者からの療養費等の支給申請は、原則として事業主を経由して行い、事業主等が代理受領します。保険者から海外の被保険者に送金されることはありません。(通達 H.11.3.30保険発39号・庁保険発7号)

海外にいる被保険者及び被扶養者が海外の医療機関で療養等を受け、事業主を経由して療養費の支給申請があった場合には、保険者は、国外への送金は行わず、【事業主が代理受領】します。その場合、支給額の算定に当っては、【支給決定日】における外国為替換算率を用いて邦貨換算します。
健康保険法に関する次の記述について、適切か否か答えよ。
保険者は、災害その他の厚生労働省令で定める特別の事情があり、保険医療機関又は保険薬局に一部負担金を支払うことが困難であると認められる被保険者の被扶養者に係る家族療養費の給付割合について、健康保険法第110条第2項第1号に定める家族療養費の給付割合を超え100分の100以下の範囲内において保険者が定めた割合とする措置を採ることができる。 2014年度(平成26年度)

解答 ○
第110条の2
保険者は、第75条の2第1項(一部負担金の額の特例)に規定する被保険者の被扶養者に係る家族療養費の支給について、前条第2項第1号イからニまで(家族療養費の給付)に定める割合を、それぞれの割合を超え100分の100以下の範囲内において保険者が定めた割合とする措置を採ることができる。(法110条の2)

(家族訪問看護療養費)
第百十一条  被保険者の被扶養者が指定訪問看護事業者から指定訪問看護を受けたときは、被保険者に対し、その指定訪問看護に要した費用について、家族訪問看護療養費を支給する。
2  家族訪問看護療養費の額は、当該指定訪問看護につき第八十八条第四項の厚生労働大臣の定めの例により算定した費用の額に第百十条第二項第一号イからニまでに掲げる場合の区分に応じ、同号イからニまでに定める割合を乗じて得た額(家族療養費の支給について前条第一項又は第二項の規定が適用されるべきときは、当該規定が適用されたものとした場合の額)とする。
3  第八十八条第二項、第三項、第六項から第十一項まで及び第十三項、第九十条第一項、第九十一条、第九十二条第二項及び第三項、第九十四条並びに第九十八条の規定は、家族訪問看護療養費の支給及び被扶養者の指定訪問看護について準用する。

(家族移送費)
第百十二条  被保険者の被扶養者が家族療養費に係る療養を受けるため、病院又は診療所に移送されたときは、家族移送費として、被保険者に対し、第九十七条第一項の厚生労働省令で定めるところにより算定した金額を支給する。
2  第九十七条第二項及び第九十八条の規定は、家族移送費の支給について準用する。

(家族埋葬料)
第百十三条  被保険者の被扶養者が死亡したときは、家族埋葬料として、被保険者に対し、第百条第一項の政令で定める金額を支給する。

113

【試験問題】次の説明は、埋葬料に関する記述である。
被扶養者が死亡した場合に支給される家族埋葬料の金額は、実際に埋葬に要した費用とされている。 【解答】×

被保険者の被扶養者が死亡したときは、家族埋葬料として、被保険者に対し、第百条第一項の政令で定める金額を支給する。 (健康保険法 113条)被保険者の被扶養者が死亡したときは、家族埋葬料として、被保険者に5万円が支給される。被扶養者に対して支給される家族埋葬料は、法113条等の規定により、被保険者に対して支給され、その金額は埋葬料と同額の5万円です。ただし、死産児は被扶養者でないため、家族埋葬料は支給されません。家族埋葬料の請求は、埋葬料と同様に申請に基づき、現金で支給されます。■家族埋葬料(法百十三条)被保険者の被扶養者が死亡したときは、家族埋葬料として、被保険者に対し、5万円を支給する。■埋葬料(法百条)被保険者が死亡したときは、その者により生計を維持していた者であって、埋葬を行うものに対し、埋葬料として、5万円を支給する。■埋葬の費用の支給(法百条)埋葬料の支給を受けるべき者がない場合においては、埋葬を行った者に対し、5万円の範囲内においてその埋葬に要した費用に相当する金額を支給する。

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