厚年法 第三十九条 (年金の支払の調整)

(年金の支払の調整)
第三十九条  乙年金の受給権者が甲年金の受給権を取得したため乙年金の受給権が消滅し、又は同一人に対して乙年金の支給を停止して甲年金を支給すべき場合において、乙年金の受給権が消滅し、又は乙年金の支給を停止すべき事由が生じた月の翌月以後の分として、乙年金の支払が行われたときは、その支払われた乙年金は、甲年金の内払とみなす。
– 2  年金の支給を停止すべき事由が生じたにもかかわらず、その停止すべき期間の分として年金が支払われたときは、その支払われた年金は、その後に支払うべき年金の内払とみなすことができる。年金を減額して改定すべき事由が生じたにもかかわらず、その事由が生じた月の翌月以後の分として減額しない額の年金が支払われた場合における当該年金の当該減額すべきであつた部分についても、同様とする。
– 3  同一人に対して国民年金法による年金たる給付の支給を停止して年金たる保険給付を支給すべき場合において、年金たる保険給付を支給すべき事由が生じた月の翌月以後の分として同法による年金たる給付の支払が行われたときは、その支払われた同法による年金たる給付は、年金たる保険給付の内払とみなすことができる。
– 第三十九条の二  年金たる保険給付の受給権者が死亡したためその受給権が消滅したにもかかわらず、その死亡の日の属する月の翌月以後の分として当該年金たる保険給付の過誤払が行われた場合において、当該過誤払による返還金に係る債権(以下「返還金債権」という。)に係る債務の弁済をすべき者に支払うべき年金たる保険給付があるときは、厚生労働省令で定めるところにより、当該年金たる保険給付の支払金の金額を当該過誤払による返還金債権の金額に充当することができる。

39

次の説明は、厚生年金保険法に関する記述である。
障害厚生年金の受給権者が死亡したにもかかわらず、当該障害厚生年金の給付に過誤払いが生じた場合、返還金請求権に係る債務を弁済すべき者に支払うべき老齢厚生年金の支払金の金額を当該過誤払いによる返還金債権の金額に充当することができる。 2011年度(平成23年度) 試験問題 [改題] (最終改訂日: 2012年10月26日)
×
「老齢厚生年金」の支払金の金額は、設問の返還金債権の金額に充当することは出来ない。充当が可能となるのは、「遺族厚生年金」の支払金のみである。
[自説の根拠]法39条の2、則89条の2
死亡した者に対する過誤払い金の充当というのは、【当該死亡に関して】新たに保険給付の受給権者となった者に支給される保険給付に【のみ】充当できます。返還金請求権に係る債務を弁済すべき者って難しく言いますが、要は当該死亡によって何らかの保険給付を受けられる者のことであり、当該死亡による保険給付が発生しない場合は、債務を弁済すべき者は存在しません。設問の老齢厚生年金は、死亡した者とは何ら関係なく、受給権者の老齢事由によって発生する年金ですから、充当してしまうのは不条理です。
[自説の根拠]法39条の2、則89条の2
なお、厚生年金保険法における充当されるべき対象となる保険給付は債務を返還すべき者が受ける【遺族厚生年金のみ】、となります。ですから、死亡した者に支給すべき保険給付で未支給としての請求ができる部分にも充当することはできません。逆に、労働者災害補償保険法における充当の対象保険給付の範囲は広く、厚生年金保険法でいうところの未支給にあたる障害(補償)年金差額一時金などへも充当することとされていますので、この比較は重要かもしれません。
[自説の根拠]法39条の2、則89条の2、労災法12条の2、労災法則10条の2
誤:老齢厚生年金
正:遺族厚生年金

39

次の説明は、厚生年金保険法に関する記述である。
老齢厚生年金の受給権者が死亡したにもかかわらず、死亡した日が属する月の翌月以降の分として当該年金が過誤払いされた場合において、過誤払いによる返還金債権に係る債務の弁済をするべき者に支払うべき遺族厚生年金給付があるときは、当該過誤払いの債権の金額をもって当該遺族厚生年金の給付の内払いとみなす。 2002年度(平成14年度) 試験問題 [改題] (最終改訂日: 2010年05月11日)
×
年金たる保険給付の受給権者が死亡したためその受給権が消滅したにもかかわらず、その死亡の日の属する月の翌月以後の分として当該年金たる保険給付の過誤払が行われた場合において、当該過誤払による返還金に係る債権(以下「返還金債権」という。)に係る債務の弁済をすべき者に支払うべき年金たる保険給付があるときは、厚生労働省令で定めるところにより、当該年金たる保険給付の支払金の金額を当該過誤払による返還金債権の金額に充当することができる。 (厚生年金保険法 39条の2)
「内払い」ではなく「充当」についての記述
[自説の根拠]厚生年金保険法附則 第89条 第2項
過誤払いですね。
問題にも書かれてあるように当然過誤払いなんですが、充当処理を問う問題です
[自説の根拠]法39条の2
「内払い」と「充当」の違いがわかりません。
どなたか、ご教授お願いいたします。
同一の人に払う場合は、内払い
死亡等で他の人に支払う場合は、充当
1.内払
前後の受給権者が同一である場合に行われる。
2.充当
従前の受給権者が死亡し、前後の受給権者が異なる場合に行われる。
なお、充当先は遺族厚生年金のみである。
[自説の根拠]法39条の2、則89条の2第1号
内払調整は、受給権者が生きている間の調整。過誤払調整は、受給権者が死亡した後の調整。

(損害賠償請求権)
第四十条  政府は、事故が第三者の行為によつて生じた場合において、保険給付をしたときは、その給付の価額の限度で、受給権者が第三者に対して有する損害賠償の請求権を取得する。
– 2  前項の場合において、受給権者が、当該第三者から同一の事由について損害賠償を受けたときは、政府は、その価額の限度で、保険給付をしないことができる。

(不正利得の徴収)
第四十条の二  偽りその他不正の手段により保険給付を受けた者があるときは、厚生労働大臣は、受給額に相当する金額の全部又は一部をその者から徴収することができる。

(受給権の保護及び公課の禁止)
第四十一条  保険給付を受ける権利は、譲り渡し、担保に供し、又は差し押えることができない。ただし、年金たる保険給付を受ける権利を別に法律で定めるところにより担保に供する場合及び老齢厚生年金を受ける権利を国税滞納処分(その例による処分を含む。)により差し押える場合は、この限りでない。
– 2  租税その他の公課は、保険給付として支給を受けた金銭を標準として、課することができない。ただし、老齢厚生年金については、この限りでない。

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厚生年金保険法等に関する次の記述について、適切か否か答えよ。
障害厚生年金を受ける権利は、独立行政法人福祉医療機構法の定めるところにより、担保に供することができる。 2014年度(平成26年度) 試験問題 [改題] (最終改訂日: 2014年09月02日)
解答
[正しい答え]

保険給付を受ける権利は、譲り渡し、担保に供し、又は差し押えることができない。ただし、次の場合は、この限りでない。
*年金たる保険給付を受ける権利を別に法律で定めるところにより担保に供する場合(独立行政法人福祉医療機構による小口資金の貸付)
*老齢厚生年金を受ける権利を国税滞納処分(その例による処分を含む)により差し押える場合
[自説の根拠]厚年法41条1項、社労士試験集中合格講座厚年p358

第12号 厚生年金保険法又は国民年金法に基づく年金たる給付(厚生年金保険法に基づく年金たる保険給付にあっては、政府が支給するものに限る。)の受給権者に対し、その受給権を担保として小口の資金の貸付けを行うこと。
第13号 労働者災害補償保険法に基づく年金たる給付の受給権者に対し、その受給権を担保として小口の資金の貸付けを行うこと。
[自説の根拠]独立行政法人福祉医療機構法 第12条第1項

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厚生年金保険法等に関する次の記述について、適切か否か答えよ。
遺族厚生年金を受ける権利は、国税滞納処分により差し押さえることができる。 2014年度(平成26年度)
解答
[正しい答え]
×

遺族厚生年金を受ける権利は、国税滞納処分により差し押さえることができない。
(対比)老齢厚生年金を受ける権利は、国税滞納処分により差し押さえることができる。
第41条 保険給付を受ける権利は、譲り渡し、担保に供し、又は差し押えることができない。ただし、年金たる保険給付を受ける権利を別に法律で定めるところにより担保に供する場合及び老齢厚生年金を受ける権利を国税滞納処分(その例による処分を含む。)により差し押える場合は、この限りでない。
[自説の根拠]法41条1項

保険給付を受ける権利は、譲り渡し、担保に供し、又は差し押えることができない。ただし、年金たる保険給付を受ける権利を別に法律で定めるところにより担保に供する場合及び老齢厚生年金を受ける権利を国税滞納処分(その例による処分を含む。)により差し押える場合は、この限りでない。
[自説の根拠]厚生年金法第41条1項(受給権の保護)

遺族厚生年金を受ける権利は、国税滞納処分により差し押さえることはできない。
[自説の根拠]法41条1項。TAC過去10年本試験問題集

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関連条文

  1. 徴収法 第三十三条 (労働保険事務組合)

  2. 労基法 第六十五条(産前産後)

  3. 労基法 第六十六条(産前産後)

  4. 厚年法 第百六十条 (中途脱退者に係る措置)

  5. 健保法 第八十八条 (訪問看護療養費)

  6. 安衛法 第十七条 (安全委員会)

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