健保法 第六十三条(療養の給付)

(療養の給付)
第六十三条  被保険者の疾病又は負傷に関しては、次に掲げる療養の給付を行う。
一  診察
二  薬剤又は治療材料の支給
三  処置、手術その他の治療
四  居宅における療養上の管理及びその療養に伴う世話その他の看護
五  病院又は診療所への入院及びその療養に伴う世話その他の看護
2  次に掲げる療養に係る給付は、前項の給付に含まれないものとする。
一  食事の提供である療養であって前項第五号に掲げる療養と併せて行うもの(医療法(昭和二十三年法律第二百五号)第七条第二項第四号に規定する療養病床(以下「療養病床」という。)への入院及びその療養に伴う世話その他の看護であって、当該療養を受ける際、六十五歳に達する日の属する月の翌月以後である被保険者(以下「特定長期入院被保険者」という。)に係るものを除く。以下「食事療養」という。)
二  次に掲げる療養であって前項第五号に掲げる療養と併せて行うもの(特定長期入院被保険者に係るものに限る。以下「生活療養」という。)
イ 食事の提供である療養
ロ 温度、照明及び給水に関する適切な療養環境の形成である療養
三  厚生労働大臣が定める高度の医療技術を用いた療養その他の療養であって、前項の給付の対象とすべきものであるか否かについて、適正な医療の効率的な提供を図る観点から評価を行うことが必要な療養として厚生労働大臣が定めるもの(以下「評価療養」という。)
四  被保険者の選定に係る特別の病室の提供その他の厚生労働大臣が定める療養(以下「選定療養」という。)
3  第一項の給付を受けようとする者は、厚生労働省令で定めるところにより、次に掲げる病院若しくは診療所又は薬局のうち、自己の選定するものから受けるものとする。
一  厚生労働大臣の指定を受けた病院若しくは診療所(第六十五条の規定により病床の全部又は一部を除いて指定を受けたときは、その除外された病床を除く。以下「保険医療機関」という。)又は薬局(以下「保険薬局」という。)
二  特定の保険者が管掌する被保険者に対して診療又は調剤を行う病院若しくは診療所又は薬局であって、当該保険者が指定したもの
三  健康保険組合である保険者が開設する病院若しくは診療所又は薬局

1 63条

次の説明は、保険給付に関する記述である。
事業主の資格取得日の提出が遅れたため、まだ被保険者証が交付されていない間に治療を受けた場合は、保険給付の対象とはならない。 2006年度(平成18年度)

解答×

1-1  63条

被保険者の資格を取得する前の疾病又は負傷に関しては、療養の給付の対象とならない。

解答×

【協会健保】の場合は、資格確認が【厚生労働大臣】、被保険者の交付は、【協会】と別々の者が行うことになり、交付までに日数を要することがあるので、被保険者証が届くまでの間、その代わりとなるものとして【被保険者資格証明書】を、当該被保険者等から求めがあった場合、有効期間を設けて交付されます(則50条の2)。

参考問題

被保険者の資格取得が適正であれば、その資格取得前の疾病又は負傷については、療養の給付の対象となる。被保険者証がないため医療機関に行っても現物給付は受けることができない。
この場合全額自己負担し、後日療養費を保険者に請求することになる。療養費は保険給付のうちの1つ。
4 63条4項
次の説明は、健康保険法に関する記述である。
高額介護合算療養費が支給されるためには、健康保険から高額療養費、介護保険から高額介護サービス費又は高額介護予防サービス費が、いずれも支給されており、かつ、それぞれの自己負担額から高額療養費、高額介護サービス費又は高額介護予防サービス費を控除した額の合計額が、自己負担限度額を超えていることが必要である。 2008年度(平成20年度)
解答×

第一項の給付(厚生労働大臣が定める療養に係るものを除く。)は、介護保険法第四十八条第一項第三号に規定する指定介護療養施設サービスを行う同法第八条第二十六項に規定する療養病床等に入院している者については、行わない。 (健康保険法 63条4項)
高額介護合算医療費の支給要件
・高額療養費が支給される場合の一部負担金
・介護サービス利用者負担額
(高額介護サービス費が支給される場合の負担額)
・介護予防サービス利用者負担額
(高額介護予防サービス日が支給される場合の負担額)
上記の合算額を【介護合算一部負担金等世帯合算額】という。
これが著しく高額であるときに支給される。

具体的には【介護合算一部負担金等世帯合算額】が、【介護合算算定基準額】に【支給基準額】を加えた額を超える場合に支給される。

高額介護合算療養費が支給されるために高額療養費(高額介護サービス費・高額介護予防サービス費)が支給されていることが必要なわけではない。

医療保険と介護保険の両方のサービスを利用していることが必要であるが、高額療養費と高額介護サービス費又は高額介護予防サービス費のいずれもが支給されている必要はない。

7 法63条3項、法74条、法75条の2
次の説明は、一部負担金に関する記述である。
健康保険組合直営医療機関や事業主医療機関では、健康保険組合の規約により一部負担金を減免することが認められているが、一般の保険医療機関の場合、一部負担金を減免することは認められていない。 2000年度(平成12年度)
解答○
保険者は、災害その他の厚生労働省令で定める特別の事情がある被保険者であって、保険医療機関又は保険薬局に第七十四条第一項の規定による一部負担金を支払うことが困難であると認められるものに対し、次の措置を採ることができる。 (健康保険法 75条の2)
設問のように、「保険者が健康保険組合である場合においては、規約で定めるところにより、当該一部負担金を減額し、又はその支払を要しないものとすることができ」ます。また、健康保険組合である場合、【規約により、保険給付としてその他の給付(付加給付)を行うことが出来ます(法53条)。
この問題は混乱すると思いますね。
一部負担金の減額・免除・徴収の猶予は、法63条3項の規定により、
㋑保険医療機関又は保険薬局
㋺特定の保険者が管掌する病院若しくは診療所又は薬局
㋩組合である保険者が開設する病院・診療所又は薬局
において当該措置が採ることができます。保険者が主語ですから、協会・組合となりますね。要は一般の保険医療機関でも、保険者により当該措置が採ることが可能な訳です。設問は一般の保険医療機関が当該措置を採ってもよいか、という問いなのでしょう。ちょっと意地悪ですね。
(法63条3項、法74条、法75条の2)

保険者が決定するものですが、問題は一般の保険医療機関において一部負担金を減免することが出来るのかどうか、と聞いているわけですから、答えは○です。社労士特有の灰色問題です。ただ、この問題はその中でも限りなく悪問でしょう。

関連問題
次の説明は、付加給付に関する記述である。
健康保険組合では、当該組合に所属する被扶養者が組合直営医療機関や事業主医療機関で受診した場合に限り家族療養付加金をつけることが認められている。

【試験問題】次の説明は、健康保険法に関する記述である。被保険者の疾病または負傷については、(1)診察、(2)薬剤または治療材料の支給、(3)処置、手術その他の治療、(4)居宅における療養上の管理及びその療養に伴う世話その他の看護、(5)病院または診療所への入院及びその療養に伴う世話その他の看護、以上の療養の給付を行う。【解答】○

労災保険の療養の給付には、これ以外に「移送」があるが、健康保険では「移送費」として支給される。(療養の給付)第六十三条  被保険者の疾病又は負傷に関しては、次に掲げる療養の給付を行う。一  診察 二  薬剤又は治療材料の支給 三  処置、手術その他の治療四  居宅における療養上の管理及びその療養に伴う世話その他の看護 五  病院又は診療所への入院及びその療養に伴う世話その他の看護 63条1項 労災の療養補償給付は移送が加わる他、「政府が認めるものに限る」とただし書きが付きます。第十三条 療養補償給付は、療養の給付とする。2 前項の療養の給付の範囲は、次の各号(政府が必要と認めるものに限る。)による。一 診察 二 薬剤又は治療材料の支給 三 処置、手術その他の治療 四 居宅における療養上の管理及びその療養に伴う世話その他の看護 五 病院又は診療所への入院及びその療養に伴う世話その他の看護 六 移送 労働者災害補償保険法第13条

(保険医又は保険薬剤師)

第六十四条  保険医療機関において健康保険の診療に従事する医師若しくは歯科医師又は保険薬局において健康保険の調剤に従事する薬剤師は、厚生労働大臣の登録を受けた医師若しくは歯科医師(以下「保険医」と総称する。)又は薬剤師(以下「保険薬剤師」という。)でなければならない。

【試験問題】次の説明は、保険医療機関等に関する記述である。保険医療機関において健康保険の診療に従事する医師若しくは歯科医師又は保険薬局において健康保険の調剤に従事する薬剤師は、厚生労働大臣の登録を受けた医師若しくは歯科医師又は薬剤師であることを要する。 【解答】○

保険医療機関において健康保険の診療に従事する医師若しくは歯科医師又は保険薬局において健康保険の調剤に従事する薬剤師は、厚生労働大臣の登録を受けた医師若しくは歯科医師(以下「保険医」と総称する。)又は薬剤師(以下「保険薬剤師」という。)でなければならない。 (健康保険法 64条)(保険医又は保険薬剤師)第六十四条  保険医療機関において健康保険の診療に従事する医師若しくは歯科医師又は保険薬局において健康保険の調剤に従事する薬剤師は、厚生労働大臣の登録を受けた医師若しくは歯科医師(以下「保険医」と総称する。)又は薬剤師(以下「保険薬剤師」という。)でなければならない。よって問題文は正解となる。[自説の根拠]健康保険法 第64条
保険医及び保健薬剤師は、健康保険法以外の医療保険各法又は高齢者の医療の確保に関する法律による診療や調剤にも当ります。また、保険医及び保健薬剤氏の登録には有効期間の定めは設けておらず、その登録の抹消を求める場合は、【1月以上の予告期間】を設けることが必要です。設問の解答は、○です。また、保健医療機関として指定を受けた病院が、保険者を限定して、その被保険者及び被扶養者のみを診療するようなことはできません。(昭和32.9.2保険発123号)参考 関連問題 診療所又は薬局が医師若しくは歯科医師又は薬剤師の開設したものであり、かつ、当該開設者である医師若しくは歯科医師又は薬剤師のみが診療又は調剤に従事している場合において、当該医師若しくは歯科医師又は薬剤師について保険医及び保険薬剤師の登録があったときは、保健医療機関又は保険薬局の指定があったものとみなす。正解は○法69条

(保険医療機関又は保険薬局の指定)
第六十五条  第六十三条第三項第一号の指定は、政令で定めるところにより、病院若しくは診療所又は薬局の開設者の申請により行う。
2  前項の場合において、その申請が病院又は病床を有する診療所に係るものであるときは、当該申請は、医療法第七条第二項に規定する病床の種別(第四項第二号及び次条第一項において単に「病床の種別」という。)ごとにその数を定めて行うものとする。
3  厚生労働大臣は、第一項の申請があった場合において、次の各号のいずれかに該当するときは、第六十三条第三項第一号の指定をしないことができる。
一  当該申請に係る病院若しくは診療所又は薬局が、この法律の規定により保険医療機関又は保険薬局に係る第六十三条第三項第一号の指定を取り消され、その取消しの日から五年を経過しないものであるとき。
二  当該申請に係る病院若しくは診療所又は薬局が、保険給付に関し診療又は調剤の内容の適切さを欠くおそれがあるとして重ねて第七十三条第一項(第八十五条第九項、第八十五条の二第五項、第八十六条第四項、第百十条第七項及び第百四十九条において準用する場合を含む。)の規定による指導を受けたものであるとき。
三  当該申請に係る病院若しくは診療所又は薬局の開設者又は管理者が、この法律その他国民の保健医療に関する法律で政令で定めるものの規定により罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなるまでの者であるとき。
四  当該申請に係る病院若しくは診療所又は薬局の開設者又は管理者が、禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなるまでの者であるとき。
五  当該申請に係る病院若しくは診療所又は薬局の開設者又は管理者が、この法律、船員保険法、国民健康保険法(昭和三十三年法律第百九十二号)、高齢者の医療の確保に関する法律、地方公務員等共済組合法(昭和三十七年法律第百五十二号)、私立学校教職員共済法(昭和二十八年法律第二百四十五号)、厚生年金保険法(昭和二十九年法律第百十五号)又は国民年金法(昭和三十四年法律第百四十一号)(第八十九条第四項第七号において「社会保険各法」という。)の定めるところにより納付義務を負う保険料、負担金又は掛金(地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)の規定による国民健康保険税を含む。以下この号、第八十九条第四項第七号及び第百九十九条第二項において「社会保険料」という。)について、当該申請をした日の前日までに、これらの法律の規定に基づく滞納処分を受け、かつ、当該処分を受けた日から正当な理由なく三月以上の期間にわたり、当該処分を受けた日以降に納期限の到来した社会保険料のすべて(当該処分を受けた者が、当該処分に係る社会保険料の納付義務を負うことを定める法律によって納付義務を負う社会保険料に限る。第八十九条第四項第七号において同じ。)を引き続き滞納している者であるとき。
六  前各号のほか、当該申請に係る病院若しくは診療所又は薬局が、保険医療機関又は保険薬局として著しく不適当と認められるものであるとき。
4  厚生労働大臣は、第二項の病院又は診療所について第一項の申請があった場合において、次の各号のいずれかに該当するときは、その申請に係る病床の全部又は一部を除いて、第六十三条第三項第一号の指定を行うことができる。
一  当該病院又は診療所の医師、歯科医師、看護師その他の従業者の人員が、医療法第二十一条第一項第一号又は第二項第一号に規定する厚生労働省令で定める員数及び同条第三項に規定する厚生労働省令で定める基準を勘案して厚生労働大臣が定める基準により算定した員数を満たしていないとき。
二  当該申請に係る病床の種別に応じ、医療法第七条の二第一項に規定する地域における保険医療機関の病床数が、その指定により同法第三十条の四第一項に規定する医療計画において定める基準病床数を勘案して厚生労働大臣が定めるところにより算定した数を超えることになると認める場合(その数を既に超えている場合を含む。)であって、当該病院又は診療所の開設者又は管理者が同法第三十条の十一の規定による都道府県知事の勧告を受け、これに従わないとき。
三  その他適正な医療の効率的な提供を図る観点から、当該病院又は診療所の病床の利用に関し、保険医療機関として著しく不適当なところがあると認められるとき。

65

【試験問題】健康保険法に関する次の記述について、適切か否か答えよ。保険医療機関又は保険薬局の指定の取消が行われた場合には、原則として、取消後5年間は再指定を行わないこととされている。【解答】○

設問の場合、厚生労働大臣は「指定をしないことができる」
「原則として再指定を行わない」わけではありません。
厚生労働大臣が再指定をしないことができる場合(健康保険法65条第3項)
第1号 申請にかかる医療機関又は薬局が、保険医療機関又は保険薬局の指定を取り消され、その取消の日から5年を経過しないものであるとき
第3号 開設者又は管理者が国民の保健医療に関する法律で罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなるまでの者であるとき
第4号 開設者又は管理者が、禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなるまでの者であるとき
保険医療機関等の指定の申請に係る病院等が、医療機関等の指定を取り消され、その取消しの日から5年を経過しないものであるときは、厚生労働大臣は、保険医療機関の指定をしなことができる。
法65条3項1号。
5年間はごめん(5年)ね、と覚えました。

【試験問題】健康保険法に関する次の記述について、適切か否か答えよ。被保険者の資格、標準報酬又は保険給付に関する処分に不服がある者は、社会保険審査官に対して審査請求をすることができるが、被保険者の資格又は標準報酬に関する処分が確定したときは、その処分についての不服を当該処分に基づく保険給付に関する処分についての不服の理由とすることはできない。 【解答】○

いわゆる一事不再理の原則です。
すでに確定した処分を蒸し返すことはできません。

【試験問題】次の説明は、療養の給付を担当する医療機関等に関する記述である。保険医療機関の指定の申請は、病院又は病床を有する診療所に係るものについては、医療法に規定する病床の種別ごとにその数を定めてこれを行うものとされている。 【解答】○

前項の場合において、その申請が病院又は病床を有する診療所に係るものであるときは、当該申請は、医療法第七条第二項に規定する病床の種別(第四項第二号及び次条第一項において単に「病床の種別」という。)ごとにその数を定めて行うものとする。 (健康保険法 65条2項)指定は、厚生労働大臣(地方社会保険事務局長に委任)H21.4.1~厚生労働大臣の権限は地方厚生局長(さらに地方厚生支局長)に委任 保険医療機関の申請が病院又は病床を有する診療所に係るものであるときは、当該申請は、医療法に規定する病床の種別ごとにその数を定めて行うものとされている。よって、問題文は正解となる。なお、病床の種別とは、精神病床、感染症病床、結核病床、療養病床及びその他の病床(一般病床)とされている。法65条2項 設問に、「病院又は病床を有する診療所」とありますが、「医療法」により、病床(ベット)が20以上の医療機関を【病院】、20床未満の医療機関を【診療所】と区分けしています。【診療所】には、病床を有していないところもありますので、設問のような、「病床を有する診療所」という表現になっています。

(保険医療機関の指定の変更)
第六十六条  前条第二項の病院又は診療所の開設者は、第六十三条第三項第一号の指定に係る病床数の増加又は病床の種別の変更をしようとするときは、厚生労働省令で定めるところにより、当該病院又は診療所に係る同号の指定の変更を申請しなければならない。
2  前条第四項の規定は、前項の指定の変更の申請について準用する。

(地方社会保険医療協議会への諮問)
第六十七条  厚生労働大臣は、保険医療機関に係る第六十三条第三項第一号の指定をしないこととするとき、若しくはその申請に係る病床の全部若しくは一部を除いて指定(指定の変更を含む。)を行おうとするとき、又は保険薬局に係る同号の指定をしないこととするときは、地方社会保険医療協議会の議を経なければならない。

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関連条文

  1. 雇保法 第十九条(基本手当の減額)

  2. 労災法 第三十八条 不服申立て及び訴訟

  3. 厚年法 第百二条 罰則

  4. 厚年法 第百三十三条 老齢厚生年金

  5. 労基法 第百十四条(付加金の支払)

  6. 雇保法 第六十六条 (国庫の負担)

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